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目覚めてすぐに祈るための愛があるころはよかった 手に入らない幸せを願うだけで健やかな気持ちになれる気がしていた
カーテンを開けると水色の空気が部屋に満ちるのはベランダの床を青く塗ったからだろうか 南向きの窓から風と朝の光がはいる ベッドから抜け出してソファに寝転がりとっておきの小説を読む これは夜ではなく絶対に朝読みたいと思っていたから そういう話だったから

子供のころ 丁度今頃だ 10日間ほどのサマーキャンプへ連れて行かれるのが大嫌いだった ホームシックにはならなかったけど よく知らない人たちと何日も一緒に寝食を共にし 登りたくもない山道を歩いたり 踊りたくもないダンスを覚えさせられたり しまいには飾る気になれない記念品を作りろくな思い出がない -ああ!ただひとつわくわくしたのは木の上で眠った翌る日 枕元で蝉が羽化したばかりで薄緑の羽根をつけ じっとしていたのを見つけたことだった- だけど サマーキャンプへ連れて行かれた子供たちの話を読むとき(それは往々にして楽しい記憶の物語ではない)どれほどの苦痛であるかを 身を以て理解出来ることだけは良かったと思う