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プールサイドはしっとりと濡れていた 歩くたびにぺちゃりと音がするけど こどもたちはそんなこと御構い無しに走り出し プールに飛び込んだ 禿頭の監視員が拡声器で怒鳴る 一斉に入らないで 一列に並んで泳ぎなさい でも反響が酷くてほとんど何を言ってるかわかりはしなかった
水のなかは穏やかに透きとおり ばた足で揺さぶられると無数の泡がたつ 止めていた息を吐き出すとごぼごぼと音がたちながら また泡が浮いていった そのまま身体を浮かせて顔をあげると 窓から横殴りの激しい雨が降っているのが見えた 隣で歩いていたご婦人方によるとひどい嵐が近づいているらしい