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明け方に目が醒めて思ったことは まだ暗いうちに家を出た朝のこと そう何度もなかったから余計によく覚えている あの人はまだ布団のなかにいるのだろうか それとも可愛い女の子と朝陽が昇ってくるのを待っているだろうか どこかの山小屋で 身体を寄せあいながら

昼 所用を言いつけられ停車場でバスを待っていると大きな旅行鞄を下げた女が隣に座った 女は手提げ袋からおもむろに箱を取り出すと 中に入っていた少し厚みのある端切れのようなものを食べ始めた それから別の箱を開けて 今度はバリバリと音を立てながら一心不乱になにかを食べている ひとしきり食べ尽くすと水筒から液体をコップに移して飲んでいるのがちょうど来たバスの窓に映ったのだけど それが赤く見えたような気がして 思わず女の方を向いたら もう誰もいなかったので そのままひとりでバスに乗った

夕方 留守番電話に知らない人からのメッセージ たいした用でも無さそうだったのでそのまま削除して眠った