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この河は途絶えない どんなに晴れの日が続いて村が干上がっても 湧き上がるのだ 深い泉の底から 絶え間なく聴こえる風の歌のように かつてわたしとおまえは同じ泉の水を飲んで育った ずっと 生まれる前からそうしてきたように 冷たい流れを全身で感じながら そのように生きてきた 誰に教えられたわけでもなく わたしとおまえはいつしか河の先を目指すことを考えて はじめにおまえが何処からか伐り倒してきた しなやかな木でで筏を作り わたしは棕櫚の樹皮で縄を編んだ それから旅に出るはずだったのに
この河は途絶えていた どこまでも続くはずだった激しい流れが 今はもう何処にもない 筏のうえでおまえは茫然と立ち尽くし わたしは その姿が朧げになってゆくのを見た