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送り忘れたメールのことを明日に思い出せるだろうか もう送らないでもいいかもしれない 今更 どちらでもいい 忘れているだろう


朝 あなたのために祈ることを辞めてからも健やかな気持ちでいます 元より祈ること自体が病むもととなっていたので あなたのことを考える暇が無くなったというのは非常に健全であり 喜ばしい変化であるのです わたしが夜 ひとりで眠るには広すぎる寝床につくとき あなたは大人ふたりが横たわるには狭すぎるベッドで愛を語らうでしょうか 或いは疲れてすぐに寝てしまうのか そして わたしが通勤ラッシュの環状線で人の波に押されているとき あなたはまだ静かな台所でバゲットをカフェオレに浸しながら朝食を摂っていることでしょう そのテーブルのうえには山積みになった資料とラップトップ 花を飾るなんてことはきっとしない 水を替えるのは面倒なことだから
あなたはわたしを罵ることも 蔑むこともなく ついには恨むこともなかった わたしもまたあなたを罵ることも 蔑むことも または恨むことも出来なかった 水辺で手を繋ぎながら 話はまるで噛み合わなくて 言葉が話せてもなにもわかりあわなかった わたしは まるで別のようなあなたの存在を求めていたから 湖のふちがいくら震えても満ちることはありえないのだった