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白い傘をさして歩く男の人たちの列を追い越して みぞれ混じりの雨が降る大通りを早足で歩いて駅舎のなかへ入ると 暖房はついていなかったけれど 屋根があるだけで暖かく感じられた 濡れた髪とコートをハンカチで拭い 手鏡で顔を見ると 鼻先と頬がやけに赤くなっていて なんとなくもう冬の顔つきをしているなと思った 自転車で30分かけてハイスクールへ通っていたときからそうだった 冷たい風が吹く街で 朝 校門へたどり着く頃には大体みんな鼻先と頬が赤くなっていた ベンチに腰掛けて鞄から水筒を取り出し まだ少し温かいお茶を飲むと 無いはずのガスストーブの匂いを思い出した