1397

あの人のことを考えている時間は健やかで みずみずしい白い花のように甘い グラスのなかでシードルの泡がぱちぱちと弾けて 夢だったらいいのにと思う 仔犬のように人懐っこい笑顔 よく晴れた冬の空のように濃い碧色の瞳 イヴェールでむかし官僚の愛人だった時の日々を思い出す あの人のお父様は本当に素晴らしい人格者で 常に冷静でありながらもその情熱は瞬時に燃え上がり 烈しかった 忘れることが出来ないほどに 今ではもう土の中で わたしはあの人の母親くらいの歳であるのだけれど