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耳元で話す彼の台詞は 適切な言葉を選び 正しく発音され 少しだけペパーミントの匂いがして わたしはそれが嫌いじゃなかった

霧雨のなかを歩きながら もうずいぶん前に一度だけデートをした男の子たちのことを思い出して みんな 喧嘩して別れたわけではないけど 何処かへ行ったり 帰ったりして音信不通だから どうしているのかこれっぽっちも知らない もう一生会うことのない男の子たち の 一生 の なかに点としてある わたしとのデートの瞬間 手も唇にも触れなかった彼らの眼差し