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知らない町へ来ている 単線の無人駅から一両編成の汽車に乗り込むと 既に何人かの乗客がいた そのなかに旧い友人がいたので偶然の再会に喜び記念写真を撮ろうとしたのだけど シャッターがどうしても動かなくて 彼はわたしを後ろから抱きかかえたまま眠ってしまった ほんとうは起きていたかもしれない 知らない町から少し離れたところにあるちいさな広場がある中心部のちいさな町にあるちいさな劇場へ行くと 信じられないほどおおきなスクリーンの舞台があったので ふたりでサクランボを食べながら白黒映画を観た 彼はもうすぐぼくの友達が来るから そうしたらちゃんと挨拶をしてねと言った しばらくしてから現れた彼の友人 ー白い麻のスーツを着てやはり白いパナマ帽をかぶり 金縁のめがねをかけたいやらしい顔の若い男ー に教えられたとおり挨拶をした 男は品のない笑い方で 頭からつま先まで舐めるように見て いいのを手に入れたねと言った