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まだ田畑に雪が残っている時期のよく晴れた日 ニルゲンドヴォで子供が産まれた 男と女の双子で 女の子は鳶色の瞳に茶色い巻き毛 男の子は濃い緑の瞳に紅い巻き毛で どちらもまるまるとした身体つき 腰が曲がった産婆は皺だらけの手で 真っ赤な顔になり泣きわめく二人を産湯に使わせた 母親はかなり出血がひどく 言葉どおり死にかけたがなんとか持ちこたえた 父親はいなかった 彼女の戸籍上の夫 濃い緑の瞳と赤毛の大柄な男は 数日前に乗っていた船が難破して 恐らく乗組員は全員生存が期待出来ないと言われていたのだが  妊婦を気遣い報されていなかったのだ -彼はそれから流れ着いた何処かの国で傭兵になり 新たな妻まで娶って数年後に帰ってきたのだが それはまた別の話- 晴れた日に産まれた子供は青空から愛されるので 雨に濡れることなく育つ ここらでは昔からそう言われてきた そして ふたりもそのように育った これが昨夜 祖母が話してくれた話 赤毛の叔父は船乗りと水兵には絶対なるなと言われてきたのに 海洋調査船で海へ出て年に数日も戻らない 今度戻るときは 北極の氷を持ってくると約束してくれているので 早く会えたらいいと思う