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これから死ぬ予定のひとが 部屋をくまなく掃除するのもなんだかおかしいし 住居用洗剤が切れていたので 買いに行くのはもっとおかしい ついでにアイスクリームも買って 公園のベンチで休憩しながら食べる これが最期の食事 だったら禁煙してたけど 煙草も買えば良かったな なんてぼやきながら 先に死んでいった友人のことを思い出してみた みんな まだほんとうに若かった そして羨ましいほど才能に溢れていて 反面とんでもなく不器用で 彼ら自身の能力を上手く使う術を知らなかった 文化芸術的損失といっても過言ではなかっただろう 彼らはみんな ひっそりと死んでいった 慎ましい自死とは妙だけれど 周囲に与える影響を最小限に抑えるよう心がけたような死に方だった ナントカ反対とか ナニガシ万歳とか 自己主張しながら電車に飛び込んだり 国会議事堂の前で炎上したり しなかった それでも確かに彼らはかつて生きていたのだけれど