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心の中で祈りの言葉を唱え フィルターぎりぎりまで燃えた煙草の煙を吸い込み 天窓から見える狭い空に向かって吐き出した瞬間 何処かで豪奢なシャンデリアが落下する音がした 客人をもてなす為に用意されていたご馳走も 食器も 酒盃も 何もかもが甲高い音を立てながら砕けて滅茶苦茶になり 飛び散ったその破片に光が乱反射し それまで真っ暗だった私の視界が一斉に煌めいた

私は彼らに今生二度と会うことがないことを確信する それはヴォトカは何処までも流れてゆくけれど 沈んでいった笹舟がもう浮き上がらないように ごく自然なことだ

拾い集めたクリスタル・ガラスの欠片を胸にして 禁じられた御名をちいさく ちいさく呼び 煌めいていた世界が 再び暗闇に戻ってゆくのを眺めながら ただ 祈りを捧げた

 

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