Entries from 2016-06-01 to 1 month

502

一年の半分が過ぎて 禊祓い 明日から 夏時間を始めるという振り返っても 忘れても 捏造された記憶だけが残る 話したこともないひとが 知らないところで傷ついて 酷く恨むというのはかなしい 或いは 話せばちゃんと 憎みあったかもしれないなら このくらいの…

501

真夜中 目が醒めてどうにもならない 身体の震え わたし自身が 全身から噴き出す汗のように 液体化して 流れ出しそうになり いや 既に幾らかは蒸発すらしてしまった空っぽになった肉体 わたしは爪先から頭の天辺まで あなたの色に染まりたい 別に何色だってい…

500

こどものころ 永遠のように感じていた時間は 歳を追うことに加速している 500日 約1年半弱 嘘ばかりでも日記を書き続けたということは初めてだったかもしれない 以前の日記帳は全て廃棄してしまったので 調べようがないのだった時が経つ速さに驚く一方で ま…

499

新しい入浴剤を買った 店員はやる気が無さそうにしていたが 入浴剤の使い方の説明をはじめるとなると うきうきしながらリーフレットを開けて「えっと こっちは分包になってるから お湯にいれたら よく揉んで成分を出して」話しだすと 「こっちはキャップに目…

498

バンドマンが叫ぶ 「アイシテル」が好きだ 主語がない言葉であるゆえの漠然とした愛を ぎゅうぎゅうの狭い空間で感じるのが とても気持ちいい 汗だくで歌う人間が好きだ 全身を使って踊るのは 本能的ではあるが 大好きな彼らに 楽しんでいることを表現したい…

497

薄い紫色の石を買ったので 金色の金具をつけてイヤリングにした ティアドロップ型ではなく マロン型なので 気取らずに使える雰囲気 耳につけると 控えめに揺れて アメリカのティーンがつけるファースト・ピアスみたいだなと思った アメリカに行ったことはな…

496

七夕の催しが始まっていたので ふたりで短冊に願いごとを書いて飾りに行った色とりどりの紙に書かれた 願いごとの多くは若いひとたちによるもので だれそれと付き合いたいとか 何かになりたいとか 未来への期待が込められていて 眩しかった わたしは 彼女と…

495

海へ行きたい 新しい水着を買う予定はあるのに 使う予定がない なんという退屈 水着の色に悩んで 浜で暮らすひとに どれが良いか尋ねると 露出が少ない方がいいと話だし 結局 色も答えてはくれたのだけど フード付きのラッシュガードこそが本心だったと思う …

494

まとわりつく湿気のなかで 髪だけは自由に動き回り ここのところ毎日 三つ編みにしてやり過ごしている 梅雨前に縮毛矯正しようかと思ったのだが どのみち乱れるなら 夏が来るのを待とうと何度かパーマをかけたことがあって 大抵失敗に終わったが 元から荒波…

493

幽霊と性交したことがある 人間ではないなにか 魑魅魍魎の類と ことに及ぶというのは 古今東西で語られていることを思うに 決して珍しいことではないのだろう 動物だけでなく 植物の精とでも孕むというのだから なかなかロマンティックではある 初めて霊的な…

492

鞄に入れたままの あなたの細胞が すっかりかたちを失って わたしは 知らないひとを愛する 嘘だったかも はじめから 何も入ってなかったんだ きっと 冷蔵庫で冷やしたコークを 缶からグラスに注いでから飲む 入浴後の汗ばんだ身体の火照りがすっと冷めてゆく…

491

誰も彼もが 傷つき 勝者ですらくたびれていた時代に それでも生きようと がむしゃらだった 誰も彼もが 必死だった ことを わたしは知らない 聞かされてはいても ほとんど伝説か 神話のようになってしまったから重なる屍は赤黒く塗られ そのなかで銃剣の刃だ…

490

後悔は先に立たぬが 思い立ったが吉日という むかしはよく 「先に考えてからやらなきゃ」と言われたが 今やるか 一生やらないか もう悩んでいる暇すら惜しい 隔てる距離を今すぐ 無いことに出来たらいいのに

489

失くした思い出がよみがえるのは 逢う魔が時 死んだ人は帰っては来ないアニスの香りを 知らないはずなのに ふと漂った甘い空気に わたしは彼女の煙草を思い出した 鳩の描かれた煙草を わたしは試したことがない 見たことがない民族衣装の話をしながら 彼女は…

488

濁った水のなかを泳いでいた あの夏 ビキニモデルだった 水上バイクに牽引されたボートに乗り波の上を走りながら わたしや他の女の子たちは カメラに向かって笑いながら手を振り ほんとうはめちゃくちゃに寒かったのに まるで夏みたいに はしゃいだ 濁った水…

487

耳鳴りが始まったのはいつからだったか 金属音に似た高音がメロディになり 静寂のなかでは ひたすら鳴り響く まるで耳の奥が 洞穴になったように 反響して 流れる水のように さらさらと 止むことなく 書き留められたらいいのに その美しい旋律 気がつけば 消…

486

白い夜を集めて きみに送ろう きちりと箱に詰めて 漏れないように 鳥のさえずりで封を閉じて 飛行機に載せて送ろう 醒めない夜になるように きみが寂しさで眠れなくても 悲しくならないように 隣に誰かがいれば 分けてあげても いいよ ここらの空気は澄んで …

485

耳の奥で流れ続けるメロディ 陽が沈んでも また昇ったら 溢れ出す 繰り返し 何度でも 死んだとか 死んでないとか 誰にも決められないし 信じていれば佳い 救いがなくたって 構わないんだ

484

汗のぬめりに あなたの皮膚を思い出す しなやかな筋肉をつつむ 乾いた肌が 動きによって だんだんと湿ってゆく 愛しさ ずっとこうしていたいねと 囁いたことを憶えてはいないだろう わたしがそれに 応えなかったこともあなたの長い巻き毛が好きだった 抱きあ…

483

心を取り戻すには 傷ついた期間の倍はかかるだろうと 漠然と感じていた 彼と初めて会った日のことを今も覚えていて わたしは水の入ったグラスを持つ手が震えていたし 何を話したかわからなかった それまで男の人とふたりきりで出掛けたことなんか一度だって…

482

お風呂が好きだ まいにち湯槽につかり ゆっくり過ごせることを至福におもう 行儀が悪いのは承知だが 10代の頃 家族の留守中 浴室にテレビを運び DVDを観ながら 泡風呂につかり お菓子やアイスを食べたのは 最高に楽しかった Never Mind the Bollocks [DVD] […

481

空港の高い天井を ぼんやり見上げながら 搭乗アナウンスが流れるのを 待っている ガラス張りの窓は よく磨かれて 外が 滑走路のある草原が 果てしなく続くかのように はるか遠くまで見渡せる はずなのだが 陽が沈んでしまっては 何処までもひろがる闇前後左…

480

若き日の もっとも美しいとされる時期 それは夏だった 夜明け前の空を覆う 青いかがやきの連続 露に濡れた草むらのように きよらかで まだなにも知らなかった 彼女は 新しい母親から 新しい母の味を受け継ぐ いや本当の母のことは ほとんど憶えていないから …

479

めくっても 破いても 白紙 きみの予定表に わたしはいないし わたしは予定を立てない 来たるべきときに備え きみの気紛れと 天気予報が一致したときにだけ 新しい上衣を羽織って 外へ出る その一歩はきっと右足からで 靴のかかとは 内側が少しばかり磨り減っ…

478

毎日 まいにち 空調のあまりよくない部屋で 天井か 窓の外ばかりを眺めている 景色は悪くない ただし硝子窓を開けると 往来の排気ガスやら 埃やらが 騒音と共に一気に入ってきてしまう この街に来てからというもの 暑さで食欲がなく 体重が減ったのにくわえ…

477

休日 部屋を出て砂ぼこりの舞う大通りを歩いた 陽射しがとても強く つばがそれほどひろくない麦わら帽子では間に合わないほどだ ここらに暮らす人々の多くは 藁で出来た平らな笠をかぶり 若者たちは各々帽子をかぶっている 時代遅れだと人気がないようだが …

476

紅い布がかかった窓から差し込む陽射しが 部屋のなかに血だまりのような色を落とし むかしなにかで読んだ 市街戦に巻き込まれて死んだ記者の話を思い出した 運が悪かったのだ その日は偶然 頭と足をふだんと逆に寝ていて 窓から入った流れ弾が頭蓋骨を粉々に…

475

傘が無い夕暮れを 濡らしてゆく豪雨 じきに止んで 通りの電飾は色とりどりに点滅し 女も男も 小さな椅子に腰掛けて 大きな声で叫ぶように話している 香草と埃の匂い 大八車を引いた皺だらけの女が わたしの手をとり 蜜柑を握らせたので 金を支払おうとすると…

474

絶縁状態にあった人と偶然出会った 当事者間に於いては 険悪な関係ではなかったので かつてのように挨拶を交わし わたしが去ったあとの様々な話を聞いた さほど興味はなかったが 彼はとても嬉しそうに身振り手振りをまじえて話し始めた まるで親しい旧友と再…

473

誰かの悪意を 林檎に注射したら腐った それを罪というのか 皮を剥けば敵意が 滴になって わたしは後悔する 後悔するだろう でも一体なぜつきたての嘘は 柔らかくて あなたの頬みたいに白くて とっても美味しいというのに