Entries from 2015-09-01 to 1 month

228

毛布に包まった仔犬は満身創痍で 吠え立てられたわたしはなす術をもたない その傷 癒えてゆくのだろうか 祈るだけではなにも 救えないとしても 生きて

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言葉が通じたところで 意図が伝わらなければ 一緒にいる理由がないというなら もう 何処へでも行ってしまえばいい わたしはあなたと過ごす沈黙がいとしい 河原町通りの喧騒 遊技場の眩しい明かり 居酒屋から漂う焼き鳥の匂い 汗で湿った手のひら 煙草の香り…

226

拾い集めた言葉が落ち葉のように散らばっている庭で あなたは独りで退屈そうに 煙草の紙を巻いてる 燐寸 擦らないで 言葉が燃えてしまうから いいや ここらの言葉は 燃えたあとで白銀になるから大丈夫 火の粉 濁音が激しく火をあげた 残りにちいさな銀の粒…

225

揺蕩うままに 黒い線を流しては 断つ痛みもないのに 胸の奥が締められては 手の震え 冷たい汗をかき 涙は出ない

224

白い冬 金髪碧眼の少年の頬は 紅色 退屈だった あの街は 同じ形の建物が並び 何処まで行っても 森と湖 つまり 何処まで行っても 逃げ場はないのだ耽美はなにも 救わないのかもしれないいや 救いなど 求めてはいないのだけれどぼくのエリ 200歳の少女 [Blu-ra…

223

過ぎ去ってゆく永遠の端っこを追いかけない

222

わたしはもう 溺れない どれだけ激しい流れに立っても あなたのしなやかな肩を 穏やかな温かさを 忘れない きっと針葉樹林が続く 真冬の わたしだけの国は 雪が溶けない それでも 花は氷の下で 紅く咲くだろう

221

窓を閉じて 静寂 あなたの声を聴く 電子音に溶けた 甘ったるい声 茉莉花の香に似てる その声をだす 柔らかな くちびるを想う

220

その流れ どんなに激しくとも 清らかであれ

219

このままたち別れてゆくのだろうか 僕には愛しい人たちの どの傷も癒せない 離れていった心に何時までも未練がましく すがるように求めているばかりだ 君の言葉 それは僕ではない人に向けられた言葉だ 重くのしかかるその度に 深く沈んでゆくようだ 果たされ…

218

第3回大阪文学フリマに行けぬまま日曜が過ぎていった 健康なはずなのに身体が重い 昼食をとらずに煙草をのんでいたが 一向に気怠さが抜けない むしろ煙草のせいかもしれない アルコールは入れなかったのだけど 文フリは終わってしまったが 白昼社さんから発…

217

登場する いずれの女も わたしであり 彼女たちであり そうだ 女なのだった 毛皮にドレス 真っ赤な絨毯 シガレット 秘密の手紙 愛人 妊娠… 8人の女たち デラックス版 [DVD] 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント 発売日: 2003/07/21 メディア: DVD…

216

なにごともない金曜日の夜 列車の遅延は だれかの死がもたらしたが それでもまた ダイヤは戻されてゆくのだった

215

今でもたまに わたしのことを大嫌いといった 会ったこともない 全く知らない女のことを思い出しては 妙な気持ちになる 泣いたり笑ったり 感情を露わにすることを 天真爛漫というのか知らないけれど 自分自身の感覚とは違うから どうしても解せない ただの温…

214

何も迷わない この街は秩序の中で動いている 間違いは起こらない この街にいる限り ちいさな地図を片手に歩いていけば たどりつくから 信じて目的地がない 高い空の上から見降ろす碁盤目の通りは整然と並び 飛び降りるための 白い土だって用意されているのに…

213

晴らせなかった怨みが 言葉を遮るので わたしは口を噤む 何も言わないあなたは そのままで良いし 嘘を吐くくらいならば 沈黙を優先させる

212

季節の変わり目とやらで 肌が荒れているが 幸いにも髪はそれほど痛んではいない もう死んだ細胞みたいなものなのに 油を塗ったり 梳いたり 手入れに余念がないからか昔 好きだった男の子と 長く別れるだろうと感じたとき 彼よりも髪を短くしようと思って美容…

211

起きたり 死んだりしながら 諸々の片付けをしたが 半分も出来なかった

210

過ぎ去った季節も 日々も 惜しむばかりではいけない

209

透明なゼリーのなかに沈んでゆくような気分 きらめく太陽のひかりは ホログラムのラメのよう 痺れるような眩暈を感じながら わたしはあなたの名前を呼ぶ 永遠の美しさを祈って

208

あなたのいない退屈な午後をやり過ごして日没 渡り鳥が喚きながら 樹々を揺らしている 航空券を買おうとしながら 結局まだ何もしないでいるのは 怠慢でしかないのだけれど 誰もいない島は孤独で いまはそれに耐えらる気がしない

207

雨が降らなかった街を 娘たちは 膝まである長靴をかたかた鳴らしながら歩く 夜の窓はまだ明るく 点々と生活を記しながら続いている

206

君はもう 新しい歌を探すのはやめたというなんだか酷く疲れてしまって と溜息を吐きながら僕は曖昧に頷きながら 車窓を流れてゆく景色を横目で見送った座席と平行に並んだ汽車の窓から見えるのは 目の前の景色だけだ過ぎ去った時間と同じように水脈を共にし…

205

『文藝誌 オートカクテル 2015』白昼社さんから発行されます

204

陽が短いからもう 家に帰ろう 狼が吠え始める前に 仕度を始めよう 間も無く雪が世界を わたしの視界に入る分だけの世界を 白く壊してしまうから 森の木の実や花を詰んで 片付けておこう 長い夜に備えて 黄色い蝋燭をたくさん作ろう 凍えてしまわないように …

203

その道は 以前 彼女と歩いた道だった 暗がりのなかで 提灯の明るさが 朧げに彼女の左頬を照らし 幻のようだった 夏の夜 雨上がりの道 昼間の住宅街は閑散とし 犬の鳴き声と 自動車の排気音がやけに煩く聞こえる 気怠さ 茶色く萎んだ百日紅を横目に 行くあて…

202

蔓延する午睡 海のはし 穏やかに暮れてゆく夕陽のもとで わたしは箱の中の黒い真珠を数える はやく数えてしまわなければいけない じきに暗くなり 何も見えなくなってしまう はやく はやく 夜に隠れてしまう 急がなければ はやく 後ろから悪魔がやってくる は…

201

胸の痛みに気づいて スリップを着直した からだに埋め込まれた金属は もうわたしの一部になり 溶け込んだのだろうか 有機物と無機物の調和 いつかわたしが死んで 腐敗しても この硝子は輝き続けるのだろうか それはなかなか素敵なことだ

200

世界の果てを流れる河は夏になれば枯れてしまうので渡し守は薔薇の咲く谷へ避暑に出掛けているどれだけ激しい風が吹いてもどれだけ強い陽射しが降り注いでも寝惚けた蠍に気をつけていれば砂漠の楽園は絶対に安全足の甲に描かれた花の名前を教えてはもらえな…

199

ブラックでもシュヴァルツでもない ヌワールという その黒は あまりにも成熟していて 神秘的な清らかさだった合成された香りは 花束になる 金色のリボンを飾り幾千万もの花で創られた 花束の香りを纏って あなたに会いにゆきたい