Entries from 2021-08-01 to 1 month

1658

ふいに思い出したマンションの名前を検索したら 不動産仲介業のサイトがヒットしたので 写真を見たら 部屋番号を見る前にわかった わたしが初めて入った男の人の部屋 家具がなくとも見覚えがあるキッチン 駅から徒歩5分 2LDKでひとつは洋室 もうひとつは和室…

1657

刈り取られた草木の青さ また伸びてくるみずみずしさ 同じような色に見えて ぜんぶ違う 蛇が出るから入ってはいけないと言われたっけ 虫がいなくても 葉っぱはよく切れる

1656

一度も泳ぎに行かなかった夏を弔うことも出来ない 陽射しだけがやけに強く 海は穏やかに広がり その道すがら こうべを垂れた向日葵の葬列 花火すらしなかった こどものころよく遊んだ花火 藁の先に黒い火薬がついた線香花火が 一番のお気に入りだったけれど …

1655

音楽が政治や金や権力にまみれているのは今に始まったことではないけれど わたしはそれにあんまり興味がない 同じ信条じゃなきゃ輪になって踊れない気がするから 焚き火を囲んでみんなで手拍子しながら一緒に歌うことすら拒否反応を示してしまう 権利を主張…

1654

ホテルのような部屋で暮らしたいので カーテンの色はヤコブセン・スイートと同じブルーグリーンで レースのカーテンにはウエイトチェーンを付けたい でもグレージュの一級遮光タイプにするかもしれない スワンチェアのひとつでもあれば良いのだけど スツール…

1653

あなたが今も生きていたなら 少し汚い言葉を使いながらぺらぺらと早口で なんと言っただろう 例え話なんて詮無いことではあるけれど 懐かしいというよりは 恋しく思うことがある 昼間の熱がこもった部屋の窓を開け放ち 涼しい夜風が吹き込み 虫の音が聞こえ…

1652

昔のセフレに新しい家族が生まれたという報せ 正直どうでもいい 今日の高校野球の結果と同じくらい関係がない いやまだ野球の試合の方が気になる 社内誌に掲載された赤ちゃんの写真 これも興味がわかない 選挙公報に並んだ中年男性たちの顔と同じくらい他の…

1651

少しずつ夜明けが遅くなり もう夏は過ぎていったように思うのに日中とても暑いので嫌になる ワイシャツを着た男の背中に大きな丸い汗染み 小型扇風機は今年も買わなかった 扇子を貰ったのに 使うこともなかった 傘と同じで持つのが嫌なのだと思う

1650

正常位で性交するのは人間だけだと聞いたような気がする チンパンジーやオランウータンならどうなのだろう 私と彼は欲望の海に溺れた飢えた獣なのでいつも後背位で終える 恐らく私たちは泳ぎ方を知らない 手段が目的になり 本来の目的を望んでいないのに 上…

1649

渡された書類に必要事項を記入しながら 彼は今のわたしと同じ歳の時に 子供を授かったことに気づいた 驚いたことにわたしは今でも子供をもつ決心がつかない それは 女だから孕んだら産むまで ひとりでしなければならないからかもしれないし 世の中が変わった…

1648

こどものころ 部屋に観葉植物のパキラを置いていた 父が園芸店で何かのついでに買ってきてくれたもので 気に入って窓際に置き せっせと水をやっていたら みるみるうちに大きくなり 鉢が倒れるようになったのに 冬が来たら呆気なく枯れてしまった 室温が氷点…

1647

隣の席の人は机が散らかっている 飛沫防止にアクリル板を置くようになって 良かったことは 並んだ机の境界線がわかるようになったことだ 気が弱いのでこちらの机にまで資料がはみ出して置かれていると 嫌だなぁと思うのに口に出せないから ちょっとずつ押し…

1646

久々に煙草を喫もうかしらとコンビニへ行ったら とんでもない値段がついていて驚いた 10年前と比べても倍くらいしてるんじゃないかしらと思うほどで とても買う気にはなれなかった どのみち喫むにも場所を探さなければならないのだ まだそこまで世の中が窮屈…

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水曜日 愛人に会う日 水は流れる 怒りも悲しみも飲み込んで 泥と混ざって濁流になる 愛なんてこれっぽっちも無いくせに 虚構の女を抱いているのよ あなたは 最後に泣いたのはいつだったか覚えている? わたしはこないだ戦争経験者の話を新聞を読んで泣いたわ…

1644

気を悪くしたんなら謝るわ とは思うけれど それは本心じゃない 謝って気が済むなら謝るという気持ちはあるけれど 何で怒っているのか正直なところわからない 事柄については理解しているけれど たぶんそれはわたしのせいじゃない ただ2人の気が合わなかった…

1643

百日紅が咲くのは真夏だったような気がしていたけれど 実際のところ晩夏から初秋にかけての時期が適切であるように思う サルビアや鳳仙花は逆で 初夏にはもう咲いている 夏休み前の花壇で遊んでいたときに咲いていたから それはそうなのだろう なのに どこか…

1642

連休中 結局これといって何もしないうちに終わった 蝉が鳴いている 雨があがった 一度も泳ぎに行かないうちに 今年も 夏が終わってゆく それがどうした

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思っているよりも 何も複雑なことはないのに 必要以上に悩んでしまう 足を使って自分の目で確かめること 手を使って記録すること それだけで少しは解決することもある それを忘れないように

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終わらなさそうだった仕事が片付いた 正気の沙汰とは思えなかったのだけど なにはとまれ一件落着 午後 コーラとサンドイッチを持って浜辺へ行った 犬も喜ぶかと思って連れて行ったけれど 砂が暑くてとても走らせられる状態ではなかったし たいして面白くもな…

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O君は少し変わっている なにが ってわけでもないけれど 少し変わっている だから 冗談がよくわからない 彼が生まれた頃に流行ったギャグを言うこともある でも それを言うとき 薄い唇を震わせて笑うのは反則だと思うくらい格好いい (おまけに二重瞼で睫毛も…

1638

かゆいところに手が届かない 会いたい時に会えない愛人 浮気性のあの子はもう帰った頃かしら 寂しがり屋で 嘘をつく代わりに口を噤む 年下の男の子 みなさんお揃いで マカオ のことを時々思い出す 秘密は秘密のまま 墓場まで持って行けた? 許せなかったこと…

1637

希望を聞かれたので 正直に答えたら 妥協することを促されたので そこからなんとなく返信が煩わしい 恋人も部屋探しも 譲れない条件があるけれど 部屋探しはお金でなんとかなるのが良いところ 家賃の予算を増やせば もっと広くて快適な部屋で暮らせるだろう …

1636

幸せそうな女ってなんだ あんたたちなんかにわかってたまるか 等価交換とか 市場価値とか なんだっていつも他人の物差しで測られるんだろう ちょっと可愛いから チヤホヤされて喜んでる内に二十代終わったんだろうなんて勝手な憶測で わたしがどんなに惨めに…

1635

ヒバの俎板 七寸のものを買った 包丁 錦で買う予定 三徳包丁が良いけれど 普段からペティナイフしか使わないので そちらにするか迷っている 鉄のフライパン テフロン加工のが使いやすいとは承知しているけれど欲しい 炊飯用土鍋 これも炊飯器のほうが便利で…

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サマーキャンプの季節が来て わたしはまたN君のことを思い出す 同い年で 北のほうの出身だったと思う 年に一度 夏に一週間を過ごすだけの友達 会うたびに彼は背が伸びて 少年は青年へと成長していき わたしが最後に参加した時 彼はもう来ていなかった まだ十…

1633

堰き止められていた流れが 一度に溢れ出して ぐるぐると渦を巻きながら 流れてゆく 何処へ? 行く先は知らない ただ 沈まないことだけに専念して流れに身を任せている 離れてゆく人 近づいてくる人 重なり合い また 遠ざかる 海の青さを覚えている? 愛した…

1632

頭痛が続いている 天気は悪くないので おそらく肩こりが原因だろう 少しずつ 陽が短くなってゆく 温度計は42℃を示し 夕方でもまだ暑いけれど 夏は本当に短い バカンスを永遠のように思っていた 起きて 食事をとり 湖へ泳ぎに行って また食事をして 昼からは…

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新しいノートの1ページ目がいつもなかなか使えなくて 1枚飛ばして使いだし そのまま終わってしまう 完璧に出来ることなんか何もないくせに 完璧主義者というのが厄介なのだ

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前照灯が暗闇を切り裂いて あなたを乗せた特急列車は海のある町を目指す 適切な速度 定刻通りに物事は進む やろうと思ったことが半分も出来ない やらないと仕方ないのだけど 気持ちの切り替えが出来ないまま わたしは眠る あなたは水面に板を浮かべ 風と光を…

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タマムシを拾った ベランダで日光浴をするため 外に出たら 小さな金属片が落ちていたので 近づいてよく見たら 玉虫色に光る虫の死骸だった 何の虫だろうかと調べたらタマムシそのものだった メタリックグリーンに臙脂色のラインが入っている 好きな色ではな…