Entries from 2015-02-01 to 1 month

14

全てを棄てて 遁走する気力もないし そうする理由もない あらゆる関係を断ち切ってゆくのは 恐ろしく骨が折れることだし 何より精神的にきつい 関係を持ち続ける辛さを凌ぐ程のことがなければ 僕には出来ないことだ傷は結局のところ 自分で治さなければなら…

13

君の顔が思い出せなくなってどれくらい経つだろう繋いだ手の感じはうんざりするほどよく覚えているのに夢の中で透明になった君の手は少し汗ばんでいた

12

泥だらけの長靴を履いた少女ダルメシアン柄のレインコートを着て傘は差さずに鼻歌混じりにスキップして歩くすれ違う酔いどれたち皆 振り返り不思議なメロディーを聴こうとするけれど交差点を渡るたび信号機に口付けて赤くさせるから誰も追いつけない木曜日の…

11

心の中で祈りの言葉を唱え フィルターぎりぎりまで燃えた煙草の煙を吸い込み 天窓から見える狭い空に向かって吐き出した瞬間 何処かで豪奢なシャンデリアが落下する音がした 客人をもてなす為に用意されていたご馳走も 食器も 酒盃も 何もかもが甲高い音を立…

10

明け方に目醒めて祈ることは 割れたグラスが元に戻ることではなく 窓の隙間から吹き込む夏の森の匂いがする風や 揺れるレースのカーテン越しに射し込む 空の色を含んだ蒼白いひかりが 切り忘れたラジオから流れる 夭折した音楽家による協奏曲が ろくでなしで…

9

臍の緒が鋏で切られた時から孤独は始まっている繋がっている仮初の快楽はやがて陰惨なほど私を苦しませ今や早く解けるようにとだけ願い女たちが魚のように泳いでいるなかで私は底のない空間へと沈んでゆく

8

もう何処へも行かずにこのまま部屋で死んでしまいたいと願う気持ちと、最期にもう一度、あなたの顔を見たい、そのためならば何処へでも行けるという意思が、ずっとせめぎあっている 或いは14歳の頃に部活を休み、部屋に隠れているのを帰宅した親に見つかって…

7

モスコミュールを光に透かすと美しい琥珀色が バルト海に溶け出したので 灯台に隠れてひっそりと罪を犯した 火を差し出した彼は共犯者であり 目撃者であり つまり私たちは細やかな秘密を共有したのだった 何も知らない素振りで 凍てついた石畳の道を歩きなが…

6

灯りを消した窓の無い部屋のなかに闇は無限に広がり、ひやりとしたシーツの奥に足を滑らせながらあなたはまるで「おやすみ」と言うように「愛してる」と囁く

5

椅子が軋む音すら愛おしい白いVANSのスニーカー

4

6月の砂浜は異国の楽園から運ばれた白い骨で出来ているので 指先を流れて掬うことが儘ならない 胸の奥がひりひりと痛むのは火傷を負ったせいなのか おまえのいる海が塩辛いからなのか 私は泪を堪えて汽車が来るのをじっと待つ

3

齢をとるにつれ、繊細さが失われてゆくのは残念ではあるけれど、私の心はバカラ製でないから傷はやがて癒えてゆく. その傷が再び抉られそうになり泣きかけた時に、あっさりとナイフを払い除けてくれた人がいてくれたのは救いだった. 長く生きてりゃたまには…

2

クリスマスに英国製の赤い革張りの手帖を貰った. 地の角に点線が入っていて、頁をめくる7日毎にぴりぴり千切ることが出来るものだ. 予定を立てられない私はそれに恐ろしく平凡で退屈な、読むに値しない日記を書いている. 高校時代に買いだめした無印良品の…

1

ロックスターになって27クラブに入るつもりだったのに、私には音楽的センスが無く、死のうと思うたびに、必ず邪魔が入ってしまったので、とうとう生きながらえてしまった.まだ、その時でも、その場所にも来ていないという事なのだろう.死んでしまった友人や…