Entries from 2018-02-01 to 1 month

1110

神さまがいてもいなくても 声だけ聞こえて姿が見えなくても 誰かを信じさせなければいけないとか 上手く説明しなきゃいけないとか そういうことはないので大丈夫 また何処かで会うかもしれないその時に ちゃんと愛せますように

1109

慣れているはずの痛み こんな器官無くて良かったのに あなたもいつかはわかるわよと言われて 未だにわからない きっと永遠にわからない 動物も育てられないのに どうして人間なら出来る なんの欠落もなく完璧に育つと思った?

1108

もう一生関わることのない女のことを思い出す 今日が誕生日だった 手を切ったはずの愛人とはまだ続いているとかいないとか ことの顛末を誰かに聞こうとも思わない はやく記憶から消えたらいい

1107

遠方より友人来るとの報せを受ける 来月が待ち遠しい! 今日も昼食を食べなかった どうしても食べるのが面倒くさい時があるという 掃除や洗濯なんかは出来るのに 食事をとるのが煩わしいというのは一体どういうことなのだろう 美容院の予約 夫の制服を繕うこ…

1106

数年前 初めて本物のミモザをみたとき とても嬉しかったのを今でもよく覚えている 断食月のすこしまえ 砂埃が舞う乾いたアフリカの土地を訪れ そのホテルの近くに生えていたそれはまるで光の滝のように黄色く輝き 枝垂れていたのだ 突き抜ける高い空の青 ひ…

1105

“Hello again” で憶えていた歌は “Alone again” の聞き違いだった なんとなく前後の流れからおかしかったけど あまり気にしていなかった そんなことあるはずないって思っていたから

1104

前髪が伸びたので自分で切ってしまった 目に入らないようまっすぐ 眉と目の間に揃えて切るくらい簡単なことで どうしてそれが10代の頃には出来なかったんだろう 何十分も鏡とにらめっこして やっと鋏を置いたのにしばらくするとまた気になって絶対に満足しな…

1103

K市のことはあまり好きではなかった これまでも これからも住みたいとは思わないし 用が無ければ行きたいこともないけれど 特別な街だった 他のどの街とも明らかに違いがあり そのことを誰もが知り 生まれ育った人々は誇りに思っている しかし世界中から多く…

1102

冷凍庫にアイスクリームがある しかもすべてハーゲンダッツ チョコレート味 彼はそれを暖房の効いた部屋で 夕食のデザートとして ソファに寝そべりながら食べている 贔屓のサッカーチームは今夜も負けてしまった 次の週末こそ巻き返さないと… 冷凍庫にアイス…

1101

愛するひとは今日もラジオの傍に置いたロッキンチェアに身を委ねながら 懐かしの名曲を楽しんでいるだろう 暖かい部屋のなかで 窓の外に見える景色が美しくありますように

1100

目標も目的地もないから回り道も寄り道もない わたしは世界の果てで かつてあなたと過ごした日々の断片を夢にみる 小鳥を殺さなかった 籠のなかに閉じ込めることも 羽根をむしることもしなかった霙が降る午後 また何処かで出逢うだろう 放浪する旅人は港を求…

1099

アナ・ウィンターに憧れてベージュのエナメルパンプスを履けば 春が来るような気がしたので探しに行ったけれど やっぱり似合わなかった なぜだかわからないけどどうしたって似合わないので また黒いエナメルパンプスを買ってしまった きちんと爪先が尖り 踵…

1098

明日は帰りにバケットとミモザを買いに行くこと 忘れていなければ バスに乗る前にバスの回数券を買っておくこと 届かない郵便物を探してもらうこと 嘘みたいなカップルが車内で囁きあっている それはつまり人形同士が 録音された映画の台詞を再生しているか…

1097

なんとなく そういう気分になったので首から下の毛を全部剃った 腕も脚もアソコもつるつる 腋の下は永久脱毛済みだからそのままでいい 茂みを失った丘のむこうにはアンズタケが潜んでいるけれど対して興味もない 浴室で適当に済ませたのできっと除草は完璧で…

1096

あの日からもう2年の月日が流れて わたしはあの人が何処か遠くの街で生きていることしか知らない 健やかに暮らしを営んでいたら佳いと思う いつかの誕生日 お祝いには何が欲しいかと聞かれたのに 答えられず戸惑っていたら ー本当は指輪がほしかったけれど …

1095

何故だかとても疲れている 寝てばかりいたせいなのか 瞼がとても重い 身体に必要なものを考えてみるけれど 考えがまとまらない 冬眠から覚めるときを知らないけれど 光がやけに眩しく 恋人を腕に抱きかかえながら飛び跳ねる夢を見た

1094

小包がふたつ届いた ひとつは通販 もうひとつは友人からだった もう半月くらい会っていないけど もっと それ以上長く会っていない気がする 不思議なもので会うとそんな気はしない

1093

雪のなかニルゲンドヴォの奥地へゆく バプチャは「眼が悪くなったから」と言ってもう編み物をやめてしまっていた 墓地は雪が積もったまま何日も溶けず またそこへ雪が降るので 石碑も花も供物もなにもかもが埋まっている 当分そのままだろう なにせ家のまえ…

1092

もう何着目かわからない黒いワンピースを買った 最初に買ったのはジャージーで出来ていてとても着心地が良かったのを覚えている 昼ごはんに誘ってもらったけれど 既に予定があったので断らなければならず残念だった 約束なんてしないで その場の流れや気分で…

1091

電車を乗り継ぎ2時間かけて出かけたら ひどく疲れてしまった 恐らくもう二度とあの駅を降りることはない 特に何もない街だった わたしの暮らす街と同じように またはクラスであまり仲が良くない友達に数合わせで呼ばれた誕生日会のように居心地が悪いところ…

1090

石と蘭 ガラス製のみずうみ を 泳ぐ あたしの部屋な寒すぎて枯れてもーてん 窓側に飾ってたんやけどなぁ うち蘭の花ようけあったのに花が咲いてたの全然知らんわ そらそやろ咲かへんかったでや この石まえに何処やらで買うたんやけど どこやったかな なんや…

1089

部屋のなかに沈んだ空気とひかりで あの人の面影を明確に思い出すことが出来る ヨカナーン もう長い髪を切り 独りで旅に出ると決めていた大人の男だった 夜明けから日没まで働き 税金だって納めていたし 彼の生き方は寄り道ではなく すべてが神話へとつなが…

1088

何も書かないでいても正気を保てるようになれば 呪いが解けたということだと思う? わたしはまだ何も知らないのに 死んだひとは饒舌だったかしら 焼きたてのマドレーヌが食べたい ちゃんと正しいやりかたで 魔法をかけた甘いマドレーヌを食べたい

1087

注文していたパン切り包丁が近々届くとの知らせ これでどんなパンでもすんなり切れるはず 干し葡萄と胡桃が入った固い茶色のパンが好き オランダの木靴みたいなライ麦パンも好き 薄く切ったのにバターを塗っても塗らなくてもいいけど スライスしたチーズと胡…

1086

子供だから 夫だから 妻だから 兄弟姉妹だから という理由で 無理矢理愛するのは辞めてほしい 血縁関係さえなければなんとも思わないことを 無条件の愛情という言葉でお互いに誤魔化すのはもう終わりにしたらいい わたしはなぜここにいるのだろう? どうして…

1085

鬼 鬼 鬼 ちいさいころに読んだ 家出した子供がバスに乗り継ぎ山へゆくうち 鬼になってしまうという話 とても恐ろしかった それほどの憎しみを抱いていたようには思えなかったけれど 少年は親兄弟も捨てて鬼の子になってしまった ほんの些細なことで でもだ…

1084

どうしたら良いのかわからない内に月は欠けはじめた 来月またブルームーンであるというのは 今月 フルムーンにはならないということ 今朝 メールが届いていた 世の中で起きた重大な事柄 (それは災害や自然によるものではない)の影響を受け その余波がちいさ…

1083

指先に赤い線 いつの間に切ったのだろう 痛みに気付かなかったくせに 血の色を見たときからしくしくと痛む 大した傷でもないのに 大した傷でもないのに 傷痕は今も残っている 肘から肩の方にかけて腕にひかれた無数の線 どうしてそんなことをしたのかもう覚…