Entries from 2018-08-01 to 1 month

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アイスクリームを買いに行くこと無茶苦茶な雨が降ってる 街ゆくひとの姿は秋の装いと 真夏のビーチガールみたいな格好とが混ざりあっていて でも今日はまだ31日だし 気温も高いし しばらくはこんな日が続くだろう 百貨店のショーウィンドウに飾られたマネキ…

1293

洗面台の電球がきれてしまったので 買いに行かねばならないと思いながらひと月が過ぎてしまった 照明自体は洗面所にあるので事足りてはいるが 習慣的に洗面台のスイッチを入れて ふたつあるうちの片方が暗いままなのに気づき 電気屋さんに行かなくちゃなぁと…

1292

むかしよく遊んだ森が どこにあったのかわからなくて 調べようにも名前を知らないし そもそも名前があったのかもわからない 友だちと誘い合わせて行くときは「あの森で何時に」と言えば 森の入り口で時間通りに会うことが出来たからだ森は国境沿いにあったの…

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捨て犬を拾ったことなんてないのに あの人の眼差しは 捨てられた犬のようだと思った 視力の良し悪しは知らないけど きれいに澄んでいて 哀しみと絶望が黒い瞳のなかに潜んでいたのだ そういう眼をした青年には何人か出会い それは時は違えど彼らがちょうど2…

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それぞれの季節が終わってゆく ヒグラシの鳴き声は 実は前から聴こえていたのだけどスーパーマーケットは相変わらず混んでいた かつてはその棚と人間の間をすり抜けて歩くだけでも 酷く疲れたもので もう一生人混みにはいけないとさえ思っていたのに いつか …

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週末ごとに頭痛になるので泳ぎに行けない同じような境遇の男女の話を聞いて 驚くほど異なる愛のかたちが 凄惨な事件を引き起こしていたことを知り 一体何がそうさせるのか わかってはいるのだけど理解しがたい(しかし先のことなど誰も知らないのだ)

1288

土曜日の午後 貨物列車を眺めるのが好きだ 昼ごはんを食べ忘れたまま 夕方になって 窓を開けて眠る季を切ると 種の周りに黴が生えていたので 捨てようかと思ったのだけど あまりに甘い香りが蠱惑的であったので 周りの果肉を切り落として口に運ぶと 舌の上に…

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百貨店へ行ったけれど 心がときめかなくて それは季節のせいか 気分のせいなのか知らないけれど 満たされているとき 必要以上に -たとえば皆が持ってるからとか 安くなっていたからいう理由で- 欲しくはならなくて良かった しっくりきたときは躊躇うことを…

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保育所へミミを迎えに行くと 顔を見るなり大声で泣き出したので 愛想笑いを浮かべながら先生方に挨拶をした 「気にしないでください いつもこうなんです」と言うと 気まずそうな顔で癇癪を起こしている小さな子に 「もうお家へ帰れるんだから泣かないでいい…

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あの人に似た後ろ姿のひとを見かけて 少しだけ懐かしくなった いつも大きいリュックを背負っていて そのファスナーは特殊な縫製で防水機能がついていると言ってたっけな レジャーシートにタオル ティッシュ 保冷バッグのなかには冷えた飲み物 きちんと折りた…

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プールサイドはしっとりと濡れていた 歩くたびにぺちゃりと音がするけど こどもたちはそんなこと御構い無しに走り出し プールに飛び込んだ 禿頭の監視員が拡声器で怒鳴る 一斉に入らないで 一列に並んで泳ぎなさい でも反響が酷くてほとんど何を言ってるかわ…

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通り過ぎてゆく知らない街の駅名を横目に 一度も降りようとはしなかった 空調がやたらと強いのに 西陽がさすもんだからじりじりと焼けるように熱くて どうにも不便だった 隣に座った中国人の男たちは息を吐く間も無く話し続けていたが 旅行鞄を携え短い名前…

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きっとこの先もずっとボタンを掛け違えことに気づかないで すれ違って同じ線の上を生きていく 繋がらない会話の糸は細い絹糸のように繊細で 絡まりやすくて 千切れはしないのに どうして 模様を織り出さない

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窓を開けたまま眠ったら 風の冷たさに目が覚めた 週明けまた暑くなるらしいけど お盆を過ぎれば大抵は秋 熱がさめてゆく 潮時を知ってそれなりに傷つかない方法を覚えたのはどの夏だったか

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素敵なかたちの照明を見つけた 高さを調べたら大好きなあの人と同じだけあった わたしの部屋を照らし出してくれるだろう コードを繋ぎさえすれば ちいさな電球でも暖かい光を放つだろう 古びれない曲線の滑らかさを美しいの一言で終えるには惜しいけれど 他…

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みんな嵐の話をしてる それは本当のことだし たぶん来週もまたやってくる 十代のころ 暴動なんて思いもよらなかった そのくせパンクが好きだったなんてさ 色々試したけどすぐに飽きてしまう 世界を見てくるなんてビッグマウス叩いた割には波に乗り遅れたね …

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誰とでも寝ることを辞めたのは あなたを愛しているから あなたが存在している限り 他の誰の肉体を介してもあなたと交じり合うことはない それはかつてわたしが神の存在を あらゆる肉体を介して求めていたようにあなたがわたしを愛していない世界に わたした…

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遠い世界のひとからの贈り物が 近いひとを経由して届いたので なんとも不思議な日だった しかし誰でも血の通った人間なのだ慈善活動の参加を申し込むともう満員ですとの返事 それは何より どんな目的であれ参加者がいるのは悪いことじゃない 結局1日だけ行…

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目覚めてすぐに祈るための愛があるころはよかった 手に入らない幸せを願うだけで健やかな気持ちになれる気がしていたカーテンを開けると水色の空気が部屋に満ちるのはベランダの床を青く塗ったからだろうか 南向きの窓から風と朝の光がはいる ベッドから抜け…

1275

喫いかけの煙草をひとくち頂戴と言って加えたフィルターが やけに湿っていた夏休み ふたりともまだ背伸びばかりして大人じゃなかった頃 とりとめのない話ばかりして 今ではもう何も覚えていない そう 名前すら忘れてしまった 彼は それから色々あって 今では…

1274

帰らなかった子供の齢と 帰らなくなってからの時間がおあいこになって 次の夏からは遠ざかってゆくばかり 歳をとらない写真のなかの子 あの夏の日をまだ覚えていて 忘れることもないだろう 誰もが漠然と助かるに違いないと思っていたのに駄目だった 波打ち際…

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ちょっとした休暇がはじまるので浮かれていたら 今この時間が一番楽しいのかもね と言われて 確かに海で泳いだり 浴衣を着て祭りへ行ったり 麦茶を飲みながらゆっくり高校野球を観るのも楽しいけれど 期待することこそ幸福なのだというようなことを 高名な哲…

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それなりに取り繕うことを覚えたので へらへら笑いながら 海老みたいに後退りしていなくなることもやるし はなからいないことにもするあの人はいまとても困惑しているだろう どれくらいしんどいか知らないけど 眉間にしわを寄せて悩んでいる顔が好きなので …

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浮いたり 沈んたり 離れたり 近づいたり ほんとうはずっと手の中にいる 飼い殺しの庭に 実る果実は熟れて甘いもう別人になってしまった 暫く見ないうちにあなたを忘れてしまった 新しい手触りも好き オマエの犬になる

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あと3ヶ月もすればまた冬が来る 草木が枯れた野原に白い雪が積もる その頃わたしは何をしているのだろう 今年は新しいコートを買えるだろうか 髪は切る予定 うんと短くするのもいいかな 楽だろうね そう言えばヴィーナスってどこのシャンプー使ってたと思う…

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ほんのちょっとの力で人の心は簡単に壊せるし 壊された日のことを生涯忘れないだろう もう二度と笑いたくない 自分にどれだけの価値があると信じているのか 高慢に思い上がったまま 屑を生み出したことに生産性があると思っているなら本当に幸せなことだ芸術…

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透けた黄土色の長いテープに蝿がくっつくのを眺めていた あれは何年まえのことだっただろう 井戸のあるところはやたらぬかくさくて涼しくもなかったけど 時々思い出す

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あの村に親近感がわいたのは 故郷の町と似ていたからだと思う 郊外の田舎町 とてもちいさな村であるのは民家と自然だけ だけどとても居心地がいい すれ違う人は大抵顔見知りで 大抵お互いのことをよく知っている 家族の事情から洗濯物まで だけど口には出さ…

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確かにあのカントクの映画はわけわかんないし それが良いんだって言いながらくそつまんない薀蓄を披露しだす男と同じくらい退屈だし 正直二度と観ることもないって思うんだけど わたしたち二人とも彼の映画に出てきても違和感ないくらいイカレてるよね 主演…

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溶けそうなほど眠かった 歯科検診の予約を済ませる 痛むところはないので大丈夫だと思う結局のところ替えがないので あるものを大事にしなくてはならない まさかこれほど長く使うとは思わなかったけど 仕方ないものは仕方ない