Entries from 2021-05-01 to 1 month
夜半 買ったばかりの器から 貫入の音が鳴り どきりとした 陶器なのに金属を爪で弾いたときのような高い音がする 無機物でありながら まるで生きているかのよう 実家は木造住宅なので しばしば木の爆ぜるような音がしていた ラップ音というのを知るより先に …
明日 人生で一番愛した人に逢うだろう わたしはきっと泣かない マスクの下で引きつった笑顔を作りながら 御礼の言葉を述べるだろう 本当に好きだった じゃなきゃ何も先送りになんかしなかった 事情があって入籍は出来ないというなら せめて一緒にいたかった…
泣きながら玉ねぎを刻み 挽肉をこねてハンバーグを作ったので 5人のFBへほぼ同時にLINEを送ったら 10代のときからヒモで暮らしている男の子が すぐに美味しそう!と返信をくれた そう これなのよ さすが天性のヒモ気質 寄生虫の人でなし と罵られていただけ…
週末なので留守番の子どもたちへお土産を買って帰る 花ではなくパンを それも動物の顔のかたちをした 中にチョコレートやカスタードのクリームが入っているもの 店先でトングを片手に 食べるかどうかわからない夫の分を何にしようか迷って 帰ってくるかどう…
情事の後で 本当はパイロットになりたかったけど視力が足りなかったと言い始めたので わたしは空軍入隊試験に体格で落とされたと慰めてはみたけれど 仕方ないことなのだ いずれにしても ふたりとも歳を取りすぎてしまったし もうなにもかも昔話になってゆく …
器狂い というには まだまだ及ばないし 烏滸がましさを感じるけれど 食器棚に収まりきらないほど蒐集している時点で どうかしているのだ 子供の頃 まさか自分が百貨店の食器売り場で腕組みして悩むことになろうとは思わなかった いや わずか数年前ですら 逢…
軽々しく犠牲を求めるなよ 命が平等じゃないのは誰でもわかっているけど お前の顔が気に入らない 利権でぶくぶく肥った体型も ふわふわした金髪も見たくない 豚ども働けだと? だれもお前の存在が輝いてると思ってないの気づいてるだろ 俺は米粉のパン食うか…
若くして南方で死んだ画家の絵を見に行った 彼がまだ幼かったときに描いた野草は 生き生きとしており 既にその才覚を表していた 本土でそれなりに絵を描いては売って 食っていけただろうに 甘んじなかったのは 芸術家としての意地があったからだろう そうい…
雨がようやくあがったので 庭中に飛び散った落ち葉と花びらを掃き集めた 嵐のせいでまだ青い葉も千切れている そのなかに赤いプラスティックで出来た船の舳先 去年無くしたキーホルダーの破片があった 別れた恋人の土産物だったそれは今更どうしようもないし…
新しいセフレ(笑)のFacebook(笑)を見たら 本名で出身大学から職場 顔写真や家族写真まで掲載されていた(苦笑)海辺に大勢で集まってBBQしたり ジェットスキーしたり あ〜なにこの人リア充すぎてほんと草生える(笑) あたしの人生と真逆なのに何処で出…
芍薬の蕾が開かないまま枯れて 先週庭で手折ったことを悔やんでいる そのままにしておけば良かったのに
ふわふわしているのは麦酒を飲みすぎたせいだろう 水溜りのなかへ足を踏み込んでしまったのに 楽しくて仕方なかった 送り火を見に行った夜に似ている 彼女は朗らかで 清らかで ときどきちょっぴり意地悪だった それは女子校育ちの女特有の湿り気で その湿度…
わたしのことをそんなに好きじゃない男の子の部屋で そんなに面白くない映画を観て そんなに気持ちよくないセックスをして 明け方にそんなに美味しくないラーメンを食べた10代最後の春 それから何度も桜が咲いては散って わかったことはといえば 彼らは わた…
獲物を捕まえたつもりか 捕まったのは僕か 彼女か 蜘蛛の巣の糸は透明だけど なかなか切れないことを忘れてはいけない
誰かの愛人になった昔の恋人の愚痴をきく月曜日は朝からずっと雨が降っていて わたしは息をするたびに骨が痛むような気がする 時々きゅうっと胸が締め付けられるようになるのは 不整脈のせいか 惚気とも不幸自慢とも言えぬ話を延々聞かされたせいかわからな…
別れた恋人は マーラーのシンフォニーNo.5を葬儀の時に流して欲しいと言っていたので 彼がもし独りで死んだなら 誰かにそれを伝えなくちゃいけない 私が参列しないとしても 或いは部屋でそれを聴きながら 彼を弔うだろう 楽しかった思い出だけを心に抱いて(…
400日ぶりに図書館へ行った 自分でも嫌になる程潔癖になってしまい 公共施設へ行くことが出来なくなっていたのだけど 本は以前と変わらず 迎えてくれた 寡黙でありつつも多くを語る書籍の山よ 検索した本の場所を 頭に叩き込み 棚から棚へと回収するように歩…
食パンと芍薬と アイスキャンデーを買って帰ります 夕食は赤舌平目のムニエル えんどう豆のスープ どうぞ早く帰ってきてね 暗くなる前に
なんてハンサムなギャルソン!と思って しばらく旨をときめかせた後 隣に座っているひとのことも 最初はそう思ってたな 慣れてしまったな となんだか申し訳ない気持ちになった 美醜など3日で慣れる ただわたしは人の顔を覚えられないたちなので しばらく会わ…
ずっと気が滅入っていたのに 雨が降り始めたら頭痛が治っていた 低気圧のせい と 言ってたのにどういうわけか 本格的に降り出すと痛みが治まる 気圧が低いところに落ち着いたからか 実は全然関係ないか かつて愛した人も頭痛持ちだった 年に一度あるかない …
百貨店が時短であるものの平日は通常営業に戻るという報せを受けてとても嬉しい わたしは百貨店が大好きなので 地下の食品売り場が一番好きだけど 百貨店は特別な場所と思って生きてきたので お金があるひとはどんどん使えば良いと思ってる わたしが資産家な…
本当に必要だったもの 求めているものについて考えてみる これから買う予定のもの 手放す予定のもの さめざめと泣いていたら いつの間に来ていたのか兄に名前を呼ばれたので 涙をぬぐうと ぬいぐるみの手がもげかけているので繕ってほしいと言われた 昨夜 双…
これから死ぬ予定のひとが 部屋をくまなく掃除するのもなんだかおかしいし 住居用洗剤が切れていたので 買いに行くのはもっとおかしい ついでにアイスクリームも買って 公園のベンチで休憩しながら食べる これが最期の食事 だったら禁煙してたけど 煙草も買…
死にたい と 検索すると 心の相談ダイヤルがサジェストされるのだけど 割高なナビダイヤルなので少し抵抗してしまう そりゃ無料でなんて出来っこないんだけど 死にたい状態で知らない人に電話をかけて話すという行為自体 かなりハードルが高い それで病院の…
作りたての花壇 散歩している老夫婦 何が欲しかったのかもうあまり思い出せない 生きることも忘れられたら良いのに
去年の同じ頃 見なかった景色を眺めて 逃した魚の大きさを思ったり 失わずに済んだなにかについて考えたりした 秋には何も実らないだろう 除草剤をまいたから 芽吹くものはなにもない
来なかった嵐 誰かの身代わり 出来なかったことをやって 罪悪感を減らして満足したなら 対価を支払えよ わたしじゃない他の女のことなら
献血へ行った このところ貧血気味だったけれど なんとか基準値に達していたので良かった どうしても血を見ないと落ち着かない 合法的に出来ないとなると 自分で傷つけるほかないが そうすると献血へ行けなくなるので なんとか健康を保つことで精神の安定もは…
昼頃に目覚めて朝食と言いながらシリアルを食べた 保管が悪くかなり湿気っていたので 牛乳をたっぷりかけて びちゃびちゃにしたのを飲むように流し込み 傷んだ苺を3個食べた どうしてすぐ傷んでしまうんだろう 散歩に出たら太陽が燦々と輝き やたらと暑く 誰…
止まない雨と頭痛