Entries from 2016-11-01 to 1 month

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性なる夜デラックス 1時間6,000円 看板を持つおじさんはもういない 社会鍋の喇叭吹きは引退して今では若い男が豆腐屋のような音を立てている 主は来ませり 主は来ませり 街頭に立つ女たちの安息日はいつなんだろう 救世主がリムジンを走らせると モエの海が…

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血の滴るようなステーキが好きだ 赤身の牛肉を ソースや塩胡椒ではなく 生山葵と醤油で頂くのが良い その食べかたを覚えたのは むかし 松本に行ったときだった あちらの生山葵はわたしの住む辺りだとあまり手に入らない 故郷の山村でも近年は栽培されている…

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本棚を何年か前に買ったのだけど どうにも合板が弛んできているし クローゼットが上手く並ばない そのうえ 昨日注文してきた新しい棚 たぶん置く場所がないのだ これには参っている 計画性がないからいけない イメージだけは守っているから 統一性はあるもの…

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花と水 蝋燭と香炉 そこは浄土なのですと 僧侶は言った わたしは神を信じない いや 信じている 何を?存在を! あらゆるところにその息吹をわたしは感じることが出来る 朝の光のなかに 草木を濡らす雨粒のなかに 燃える焔のなかに 肌を刺す木枯らしのなかに …

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早いもので来週はもう師走。 12/4は総合表現集団『かべちょろ』代表の田中ジョヴァンニさんと二人芝居に出ます。 『若者のすべて2016』2016.12.4(日)@京都三条VOXhallOPEN/START 12:30/13:00adv ¥1,600/door ¥1,900 (共に1D付) 演劇やポエトリーリーディング…

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パン屋の広告に仏蘭西から直輸入したクロワッサンだとあるので どうやってぱりぱりの皮が壊れないで届けられるのかと尋ねたら 焼くのは届いてからですと言われたのでなるほどと思った雨の午後食事に対して 大して関心がなかったころ わたしは食べることが面…

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昼下がり 下校中の子供たちは 揃いのどぎつい青色の上着を着て宿題の話をしている 髪を飾る紺色のリボンは幅広のグログランリボンだ 潤沢に使われたリボンが品良く編み込まれた柔らかそうな黒髪を纏めているのは とても可愛らしかった 恐らく いや間違いなく…

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星型のラムネが気に入りで 缶に入れたのを持ち歩いている これは量り売りのをたまにしか売っていないから なかなか手に入らない 少し固い白いラムネで なかにちいさな色付きの砂糖粒が入っているのだが 舐めているとまわりが先に溶けて 粒だけが舌の上に残る…

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ほんとうに知りたいことは 教えてもらえるけれど 何をほんとうに知るべきかは 誰も教えてくれない 例えば記号 名前や年齢 職業 肩書 それらは単純かつ明快に開示された情報であり 誰にでも公平に知り得ることが可能 登録された戸籍謄本を基に わたしという人…

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咳が酷くなったと思ったら 頭痛までしてきたので どうやら風邪だったらしい普段から飲んでいる数種類のサプリメントに加えて 漢方薬を飲み なんだかよくわからない栄養ドリンクを飲んで仕事へゆく 本当は休めたらいいのだけど 眠れない頭痛はつらい

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子供のころから11年間 給食を食べて育った 途中で食パンがビニール袋入りになったり アルマイトの食器がメラミン製に代わったりした 食べるのが遅いうえに 好き嫌いが多かったから よく配膳室で食べていた あまりにも食べないものだから教室さえ追い出された…

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沼のような眠気 湿り気を帯びた 熱帯夜に似た眠気 或いは金属 液状化した重金属のように 激しく流れてゆきそうな 意識なのだった 喧騒の街 わたしは肉が焼ける臭いに吐き気を催す

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はぐれないように 縄を掴んで歩く黄色い帽子を被った子供たちの行列 その脇に花束を抱えた老人うちの向かいに葬儀会場が出来たのは何年前のことだったろうか 毎日 誰かが生まれては死ぬから 大きなシャッターが開き 中から黒塗りのリムジンが出てくる 今では…

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あの頃の未来にいるはずなのに ぜんぜんそんな気がしないのは 首都がネオ東京でも 第3新東京市でもないからではなく 原子力で動く十万馬力の子がいないからでもなく いや そもそも 2001年の時点でわかっていたはずだし そんなことは夜空の向こうになにを思っ…

641

夢のなかでライオンを飼っていた とはいえ本物のライオンをテレビでしか見たことがないので それは薄い茶色の毛皮で出来た中型犬くらいの大きさをした塊みたいだったし 手で捏ねた何かよくわからない柔らかいものが餌だった 檻のなかの毛皮に それらを与える…

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とても良い香りの石鹸と入浴剤を見つけたので 買おうとしたのだけど 月末にポイントセールがあるので待とうと思う その頃まで売り切れませんように 春にはうかうかして 桜の香りのを買い損ねてしまったんだった一体どうして そんなに石鹸だの 香水だの 欲し…

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必要か 必要でないかで分けてしまえば 特定の恋人は要らないし そもそも自分自身が無くてもいいのだけど 生活に彩りを与えるためだけにしては 色々と手間がかかるし 愛もお金もかかるしで それに映画はひとりで行けるし 本はふたりで一緒に読めない気分転換…

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あなたと最後に身体を重ねた日から 何度月の満ち欠けが繰り返されたのでしょう わたしの身体は確実に変化を遂げ 日々のささやかな出来事にも 涙をこぼしたり 微笑んだりしています 出血の苦痛と引き換えに得た苦しさというのはしかし 喜びに溢れているように…

637

歌わないカナリヤが欲しい 羽ばたく姿をみるためだけの ちいさな可愛い天使 籠のなかに入れたくない 自由気ままに飛ばせたい 青空と樹々の狭間を 優雅にずっとむかし 鳥を飼っていた というか 預かっていた 何か忘れたけど たぶんセキセイインコで その頃は…

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花を買う店は大体決まっていて わたしはいつも薔薇を一輪 でも紅いのは買わない それは自分のために買うものではないと思うから好きになるのは簡単で 口にさえ出さなければ ある日突然 どうでもよくなっても 何にも変わらないし 誰にもわからない 咳が酷くて…

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身辺整理を繰り返すうち 成人するまでに描いたり 作ったりしてきたものや 写真なんかはほとんど捨ててしまった 何ひとつ 生きた証拠を遺らせないで 消えようとしたからなのだが その中で 初めて買ってもらった赤い靴だけは どうしても捨てられなかった履いて…

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どちらを選んでも最低な答えしかないときに どうして別の答えを選んだらいけないんだろう 自殺を試みた人間が 幸せな未来を夢みることは許されないのか解っていたのに止められなかったのか 流れに身を任せたのか 激流に飲まれそうなときは溺れないように 必…

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スコットランド製のストールはカシミヤの柔らかいタータンチェックで わたしはかつて チェックのミニスカートばかり履いていたことを思い出した古着屋で買った暗い色味のプリーツスカートを素敵なバンドのシャツと一緒に 黒いライダースジャケットを羽織り …

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新しい貴金属を注文した アメリカ製のピアスを一粒 わたしはそれを胸に飾る 青いチタンのアンカーを埋めてその先につける 煌めきをいつも眺めていたいから 透明な輝きを求めているから わくわくする 綺麗で儚いものはいつも愛しい

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この街にはいくつかの百貨店があって それぞれに特色が見られるので 例えば少しカジュアルなワンピースが欲しければ Tが色々揃っているし 贈り物を選ぶならIが間違いないし 素敵な靴を探しているなら断然Dが良い 流行の品と定番の品 どちらもフロアいっぱい…

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飛行機の座席の背面にある液晶画面 または客室の前方にある大型スクリーンに時折映し出される現在地情報というのか 地図の上をとぶ飛行機の印を追うのが好きだ とはいえ ユーラシア大陸上空を飛ぶことばかりだったので 太平洋の方へ飛んだのは10年以上前で …

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新しい敷き毛布を買い 炬燵を出した わたしの部屋の話ではないのだが 手伝いに行ったら喜ばれ その御礼にと蜜柑をくれたので へたのまわりを黄緑色にぼかした やわらかい皮をめくって食べた 薄皮はそのまま食べてしまう ずっとそうしてきたから 日没が早いの…

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干渉も 詮索も 嫉妬もない 愛だけの国で生きられたら良かった 秘密も 束縛も 虚言もない 快楽だけの理想郷は ここには存在しない わたしとおまえの間にある河は 地球上のどの海よりも深く 新月の夜よりも暗く 北極の氷よりも冷たい涙が流れている

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エナメルパンプスを履き ワンピースを着るのは 映画『ひなぎく』が好きだからだ ただ単純に好きなだけで 歴史的背景なんてものは 社会科で習った程度しか知らない 言葉は挨拶を少しだけ覚えた こどもの頃にみた世界地図には チェコスロバキアという国があっ…

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男は展望台から街を見下ろしながら「あそこに見えるのが僕の好きな墓地だ」と 白っぽく広がる丘陵地帯を指差した わたしは目を凝らしてみたけれど あまりよく見えなかった 既に黄昏時だったのだかつてはわたしも墓地が好きだった いや 忘れていただけで今も…