Entries from 2016-01-01 to 1 month

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出会う時期さえ合えば と思ったけれど いずれにせよ 駄目だったかもしれない 男の子をめぐる 熾烈な争い なんて忘れないでいたいのは 幸せは手に入れることがすべてではなく 手に入れることで 不幸になるものもあること 他人のこころも 身体も なにも 手に入…

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ブログを始めてもうすぐ一年。嘘ばかりの当日記をご覧の皆さまには、心より御礼申し上げます。虚構と非虚構の間でみる私の夢、ある意味ではすべてが真なのだと、否、すべてが茶番、三文芝居の記録だと、今後ともお楽しみ頂ければ幸いです。 というわけで告知…

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青果売場を歩けば 蕗の薹に うるい 菜の花 きちんとラップされ トレイに並べられている そう おまえ 山形から来たのね きれいな若草色をしてる 店員は春キャベツに値札をつけながら おい それは出会いもんやから 離らかしたらあかん ・ なんですか出会いもん…

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雨が降れば傘をさせば良いし (折畳みのが鞄に入ってる) 最終バスに乗り損ねたら タクシーをつかまえたら良いし (駅までワンメーター) ストッキングが破れたら コンビニで買えば良いし (もう脱いだって構わないけど) 涙が溢れたって 郵便局でもらったティッシ…

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闘いのゴング 既に鳴り響いてるし むしろもうわたしはベンチから動かないし 肩が酷く痛いから 誰を殴ることもないわけで いや 敵はエクセルの数式のなかに紛れ込んでいるのだったいつからかショコラは自分で食べるとっておき あるいは 友達と交換するものに…

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シャンプーを変えた日曜日 あたらしい石鹸は林檎のように真っ赤なのに泡は白い 湯けむりの浴室にただよう香り ゼラニューム 仏蘭西製のシャンプーを使いきったので 次からは亜米利加製 ちっとも泡が立たないのに 気持ちいいのなんで 無香料 無添加 無着色 無…

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懐かしい話をするたびに みな手を叩いて喜び 乾杯をした 何もかもが思い出になってゆくのだ 今日のことも南の方で雪 わたしは神様が暮らす街を想う あの島の墓地は 白い十字架と可愛い花輪 夕暮れ時の茂みの奥 やけに鮮やかに見えたのは 雨上がりのせいだっ…

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このブログは虚構と妄想で構成されているので、実際、寒波がきているとはいえ私が暮らす街に雪は降っていないし、池の水も凍ってはおらず例年通りといったところ。しかし、寒いのは寒いのでウオッカや日本酒を飲んで気を紛らわせているのも事実。鴨鍋と日本…

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雪の溶けない街を歩く 春まで残り続けるのだろう ここらの冬は長くて暗い河を眺める 淀んだ河は 音を立てながら 濁った水がコンクリートの土留め壁ぎりぎりを流れる 何年か前の夏の夜 身を投げようとして辞めたその河吸殻を捨てずに ポケットへ片付けた男の…

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街を真っ白に壊すような寒波が来るというので 街ゆく人々は 爪先から頭まで完全に身を隠し 闇のなかへ逃げ込みはじめた 無色透明の木枯らしは厄介だ 針葉樹の森を駆け抜け 凍った池の上を滑り 河川敷に不法投棄された哀しみを残らずさらって 残酷な悪魔の斧…

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家から出られないままであるのは つまり 何年か前の夜 ベランダから飛び降り損ねたわたしが 未だにそこにいるからで消えたいと思うそれは 衝動的であるが 待ちわびた願望でもある 家を出て 彼と暮らしたいと思う ふたりで同じ火酒と薬を共有したい わたしは…

340

生まれてから今まで 一体何足の靴を買い どれだけの距離を歩いたのだろう ビニル製のガラスの靴 厚底のスニーカー 赤いつま先のバレエシューズ 白い指定運動靴 編上げの素敵なブーツ ハルタのローファー 桃色のデッキシューズ よく蹴つまずいたメリージェー…

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りぼんがかかった灰色の箱 金色の文字 かたかたと音がなる 大きな箱 両手で抱えて そっと 開ける 中にあるのは 夢 ずっと見ていた夢のかたち 黒い革の靴 木の底は 揺れる はずむ 踊る 死ななかったわたしと 死んでしまった何人かのわたしたちが 一緒によろこ…

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父は極東の港街で生まれた船乗りだった 両親は鰊漁で財産を築き 家は鰊御殿 見晴らしのよい丘の上に立つ 親兄弟を殺された鰊たちの襲撃に遭うまで束の間の平和 父が10歳の誕生日 嵐がやってきて つまりそれは 鰊がけしかけたものだった 大量の鰊と塩辛い水で…

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まだ幼かったわたしは ほとんどなにも覚えていなくて ただ 揺れたこと とても寒い朝だったこと 学校へ行ってもまだ 携帯やインターネットも身近で無いから 情報がなく 翌日以降の新聞で 次々と事態が明らかになっていったこと それだけしか 覚えてはいない …

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いつまであの人の想い出に浸っているのだろう 昼下がりの部屋 窓を開けると外から柔らかな空色のジェリーが入り込み 布団に包まったままのわたしの口許にまで来て 溺れそうになる そのたびにわたしだけの神さまの御名をちいさく叫び 透き通る南国の海を瞼の…

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夜の 滑らかに流れてゆく ひかり それは自動車の前照灯であって 星ではない 貨物列車 黙々と走り続ける 臙脂色の車体 北から南へ 流れてゆく それは汽水のように 澱むことなく 流れてゆく いのち 掴むことができない 水のように ぎんいろ 指の間をすり抜けて…

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清算出来ない過去を集めて 初春のクリアランスセールで叩き売り 誰の不幸 蜜の味 解消されない関係を煮詰めて 誰に飲ませる気でいるの 手切れのハンカチーフを44枚 撒き散らしては女の子に最後の夢を見せて とんだ茶番だったって気付いてた?

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それからもう5年の月日が流れて 彼は大学を卒業し わたしは2度目の転職 だけど死んだあの子だけは 冷たい海の底 漂っては砂に混じり 溶けることもない 骨が食べたかった あんたの骨が食べたかったんよ 細かく砕いてから 舐めて 舌の上でざらざらて味わってか…

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かつてエマとナターシャというふたりの友人がいた イングランドのハイスクールに通う 同じ歳の女の子で わたしは彼女らと 好きな音楽について延々と (当時はBBSが盛んな時代で) チャットしていた エマは黒髪で緑色の瞳 ナターシャは金髪碧眼の北欧系の娘だっ…

331

喫茶店で初めて珈琲を飲んだのは 幾つだったか覚えてはいないけれど まだ椅子から降ろした足が床に届かないくらいのときで 砂糖を入れるなら ココアかジュースにしなさいと言われ 私は苦くて黒いままの珈琲を飲んだ いや苦いなんてことはなかった 私はそれ以…

330

山奥の道をゆきながら 車輪の下の少年ハンスを思い出す ここらには首をくくるのに適した樹々が沢山あり せせらぎだって聴こえる ヴォトカを飲みながら眠れば 寒さでどうにでもなるだろう 同時に 自死遺族になる家族のことを想う 腐乱した 或いは獣に喰われた…

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北方でくらすひとからの小包と 海の向こうから戻ってきたひとからの手紙が届いた 箱の中には 真っ赤な宝石が敷き詰められており 少し醤油の香りがした 手紙には 彼の無事が記され わたしは近いうち再会するであろうことを感じる

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あなたが私を誘惑し うたかたの愛を囁き合い 肉体を重ねあったのち どのようにして手を下すかまでを想像する 美しい瞬間の連続 桜吹雪がいつまでも続くような不安と 高速道路のPAから夜景を眺める時のような胸の高鳴り 新宿や六本木 五反田の端で何度も殺さ…

327

七草粥をつくろうと 八百屋へ行ったら もう売り切れてしまったと言われたので 今から田畑へ探しに行くのも骨が折れるし 揃うかどうかも怪しいので 代わりにフリーズドライの粉末を買った 誰でも簡単に作れて美味しいのは 科学の結晶が味の秘訣 レジを待つと…

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忘れたはずの曲のリリックをまだ口ずさめる ひりひりした感覚 振動というよりも衝動だった わたしは髪に花を飾り 派手な着物にレースで出来たスカートを引き摺り 高下駄を履いて 同じような格好をした 友人たちと街を歩いた お金は無かったし 新しいCDや ブ…

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あなたが去ってしまってからというもの この街から冬が消えてしまいました 田畑は霜が降りることなく泥濘み 水溜りは凍らないので 滑って転ぶこともありません 三つになる甥っ子と雪遊びをしようと 去年の末に買って置いた赤い橇は 物置に置いたまんまです …

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玄関を入ってすぐ 板張りのホールで 従姉妹たちと冬休みの宿題に出された書初めを書いた 夢 希望 夢 希望 夢 朧げな記憶のなかから よみがえるのは 半紙のうえを走る筆から 漂う墨の香り そして筆を洗う水のつめたさ 洗面台が汚れるからと外にある水道を使っ…

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セールへ行き あたらしいニットを購入した シーズン前に店で見かけていたもので びっくりするほど安くなっていた 大量生産された中国製のニット ケーブル網の模様が素敵な灰色 おうちで洗えるアクリル製 カシミヤの肌触りが良いのを知ってはいるけれど なに…

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嘘でも 冗談でも あなたが言ってくれた言葉のすべてを 大切に思うし 願わくは 現に叶えばいいのに 流れる河のなかで ぶつかりあう笹の小舟みたいな人生 いずれ沈んでしまうまでに あとどのくらい同じ流れをゆけるのだろう 少しでもながく 一緒にいられたら