Entries from 2021-04-01 to 1 month

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日記に初めて自分の気持ちを正直に記したとき ほんの少しだけ気が楽になった わたし自身がこうあるべきと考えていた 冷たい型から 固まらなかった熱い鉛のような感情が溢れ出し どろどろになり あの人を飲み込んでしまえばいい そして 焼き尽くしてしまえ わ…

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歴史がつくられてゆく この瞬間に 繰り返される 日々の営みが 新しい尋常で構成されては また壊されて それでもまだ続けなければならない いつか絶えるまで

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こんな夢を見た(聞いた話2/2) 仕方ないので 次で降りようと荷物をまとめていると ことの外すぐに停車した 田舎では駅間がやたら長いものなのに珍しい 田園風景のなかにある停車場は木造で 自動改札機も当然なかったが 駅係員は3人もいたので 間違って違う…

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こんな夢をみた(聞いた話1/2) 汽車に乗り故里の村を目指している 北国の最果てにある終点の駅が最寄り駅であり 一日朝夕二本ではあるが乗り換えなしで行くことが出来るので 座席に座って景色を眺めているうちにうとうとと眠ってしまった ふと 汽車が大きく…

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電車はいつも通り 定刻に到着し いつも通り満員だった 少し早い夕方 車内で飲酒している××の隣に座るよりは余程ましだ まったく 家まで待てないのかねぇ 精肉店へお使いに行った犬でも帰宅するまで食べたりしないのに と思ってしまうのは 僕が外で飲食するこ…

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同級生が殺人事件で逮捕された 結構前のことだ 判決が確定したのは今年に入ってからなので そんなに昔のことではない 彼と話したのはもう20年くらい前に 一言二言だったから 多分彼は私を憶えていないだろう 掃除していたら 捨てたはずの卒業写真を見つけた…

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文字だけを頼りに 初めて食べるものを作るのは難しい そして動画が簡単に再生して視聴出来るようになった今 普段食べているものですら 映像や写真なしに初めて作るのは 新鮮なことだった 正解がわからないから 間違いもない 美味しければ 食べたひとが喜んで…

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つかみ取りも 詰め放題も 要領が悪くてうまく出来ないので ふだんからする気もないのだけど 檸檬の詰め合わせだったから別だ いつも送料を払って取り寄せてるのがその場で買えるだけでも嬉しい 現地じゃこんなのもっと安いよと言われても 行くに行けないのだ…

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帰宅したら 娘がビオラの花をすり潰した青い色水を作って 飲もうとしていたので止めた マーロウのお茶はそうやって作るんじゃあないの

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何処へも行けない休暇を不幸だと嘆くひとの隣で わたしは人混みへゆくと動悸がするので わざわざ何処へも行きたくないと思った 家にいるのが一番安全とも限らないのだけど

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昼ごはんの後 非常時が尋常になった日々に わたしたちは 過去の思い出話に耽り 未来に期待を寄せた 始業のベルがなる寸前 わたしは彼に 何が食べたいですかと訊いた 彼は 某国の名物料理を迷うことなく答え わたしはそれをまだ食べたことがないので 少し羨ま…

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電車が来るのを待つ停車場に立ちながら 線路へ吸い込まれそうになるのを 何とか思い留まる感覚を知っていますか 特急電車に激突した自分の肉体が衝撃でばらばらに飛び散り 運転席の窓硝子が割れたり 砕けた骨が誰かに当たったりするかもしれない それほど大…

1523

くだらない三文記事を読んで 心底うんざりしている 一方で それが正しい方法だと 実践している馬鹿が一定数いることを知って驚いた 俺はもう 誰にも期待していないし 誰も俺に期待しないでほしい おまえが望むものはなにも与えられないし あとはすり減ってゆ…

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午睡 旧友からの電話で目覚めたらもう夜だった サイレン 雨がまだ降り止まない

1521

12年ぶりに新しい傘を買ったのに 少しも雨が降らない 出かけない時だけ降る 前の傘も実はそうしてあまり使わない内に 金属が錆びて傷んで捨てた

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昨夜注文した絵の具が 今朝もう届いたらしい そんなに急いでいなかったのだけど とにかく助かった 読めることと 理解することが別物というのは 至極当然なのだけど 世の中 意味がわからないことが多くて困る 聖書を読んだけれど 深く理解は出来ないなんて高…

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新しい口紅を買ったのは去年の その前の冬だった いつも塗っている青みがかった真紅色 まだ封も開けていない リップクリームとクッションファンデのキットを買わなくて良かった 黒いポーチは格好良かったけど ファンデを検品してもらったとき リキッドが少し…

1518

ひとでなしのあなたは ひとのことばがわからない ひとのいたみもわからない 台風が過ぎたあと 夏の午後に わたしは彼と初めて会った 生温い潮風が吹きすさぶビル街で あの人は 若くて 健康で 日に焼けて逞しく 話す言葉のあちこちに教養が垣間見えただけでな…

1517

冬服を洗って茶箱へしまい込んだ 銀色のトタンのうえに並ぶ色とりどりのウールのセーター 毛玉を取りながら 一生物のウールのセーターなんてのはないんだろうと漠然と思う 年に数回着て 洗うのも一度だけだとして それを一生物なんて言うなら なんとなく勿体…

1516

天気が良かったので庭で日光浴をした ビキニが着られるのはまだ少し先だけど 四月とは思えない陽気で 雲雀はもう鳴いていなかった 何処に行ってしまったんだろう?

1515

お花畑にいる人の 戯言を聞いて こちらはすっかり冷めてしまった 昼間から麦酒が飲める平和な日々のなかで愛がなんだ 登場人物全員気が触れた出来の悪い三文小説を見せつけられて 何も言うことがない 言い返さないことを論破したと思い違うなよ 呆れて物も言…

1514

あなたなしでは生きてゆけないと 何人の唇を震わせてきたのだろう 涙が頬を伝う前に あの人は口付けて塞ぐから 嗚咽する間もなく 女は死ぬ それは つまり 彼がいるからこそ 生きていかれないことになるのだけど 愛に生きるということがそうなのかもしれない …

1513

何が効いているのかわからないけれど 飲むとじきに頭痛が治り 倦怠感もなくなるので 常備薬としておいてある薬があって もうひとつ 痛み止めに置いてあるのを 期限が切れていたことに気づかず飲んだが 少しも楽にならなかった 消費期限が切れていると効かな…

1512

偶然見かけた昔の恋人の視線が どこを見ていたのか あの作り笑顔が 誰に向けられていたのか 実はこちらは最初気付いていなかった 彼の隣にいる別の人に気を取られていて よく見ていなかったから 別にわたしを無視していたとて 彼を咎めることはしない

1511

爪を藤色に染めた 桜の見物には 若葉色の着物を着るのが 季節を先取りして乙なものと言われたが 爪は誰が気付くだろう とても薄い藤色

1510

すぐにばれる嘘ばかりつく君のメールが届いていた朝に雨は止んでいた 何の害も意味もない 空っぽの嘘 息をするように嘘をつく 悪気はない ということは それが君自身だから 怯えたよつな瞳で 今日も

1509

頭痛 睡眠 倦怠 雨が止まない 雑誌のページをめりながら 書いてもいない星占いを読む 自分の目で読む 書かれていない文字を 未来を読む 千里眼がなくてもわかることがある 誰にでもわかること

1508

去年の春をどのように過ごしたのか あまり覚えてないくて それでもまだ 彼女は生きていた しばらくの間 会えないだけで 秋には戻って来れるだろうと ただ漠然と思っていたから 薄紙を透かせば 書いた文字は裏からでも読めるけれど その字が正しい向きに変わ…

1507

花がほとんど終わってしまった ビルの谷間にある公園では まだしばらく咲いているかもしれない 年に一度だけ会っていた人たちに 会わないまま季節が巡って そうしてお互いに離れ 忘れてゆくのかもしれないし またいつか 会うのかもしれない 閉店した喫茶店の…

1506

ヘアオイルとネイルオイルを買った どちらもヴァニラの香りが混じっている 閉店間際に慌てて買ったので もしかするとカサブランカの香りだったかもしれない 両方とも好きなので どっちでも良いけど 髪を洗うのが面倒で嫌いなので 週に一度トリートメントのた…