50

子供の頃 バスに乗って鉱山へ行き鉱石採集をしたことがある かつては銅が採掘されていた山で 50年前に閉鎖された今では僅かに面影が残るばかりだ


青草の茂みを掻き分け 転ばないように気をつけて小岩が転がる斜面に辿り着くと 我々一行はそこに屈み込み ショベルで地面を掘った 湿った土の匂い 山奥の冷んやりとした風 子供たちはせっせと土を起こして『宝石』を探したー柘榴石 つまりガーネットが採集出来る場所だったのだー が勿論 美しく磨かれた宝石が採掘されることはないから 土の中から見つかったのは ほんの小さな赤黒い『鉱石』だった

我々はビニル袋に幾つかの鉱石と若干の失意を詰めて帰路へついた 暫くはかたちの良いものを机に飾っていたが その内に庭に撒いてしまって手許にはもう無い



ところで紫水晶は二日酔いに効くらしいのだが ヴォトカ好きの私には実にうってつけの迷信である この紫が酒神バッカスの注いだ葡萄酒の色とはなかなかな素敵な話だ
f:id:mrcr:20150405230634j:plain