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改札を出る前から動悸は激しくなり 歩くのもやっとになった 最後にこの駅を降りたのは ある訣別のためだったので もう二度と来るはずではなかったのだ

呼吸が乱れ 真っ直ぐ前を見られなくなり始めたとき 遊技場と飲食店しかない駅前商店街にも 世界の恵まれない子供達のために 募金箱を引っさげた品の良い中年の男女が立っているのが見えた 何となく変な感じがした 排気ガス臭い交差点で深呼吸した僕は 呑み屋と立体駐車場だらけの街を歩いた チクショウめ 6年前と何にも変わっていないじゃないか 喫茶店は違う喫茶店になっていたし 風俗案内所も少し地味になっていたけれど 僕はどの街角にも見覚えがあった あの頃一緒に桜を見た奴らは今頃何してるんだろう?

齢と共に癒える傷はあるものだ それを理解出来るようになるには 生きなければならない 傷はこれからも増えるだろう それでも新しい景色を観たいと思う くたばってしまうまで
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