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「折りたたんで持ち運べる傘を買おうとしたけど辞めたわ」と妹は言った 

「畳むのがすっごく厄介なの、知ってる?いま売っているのはほとんど晴雨兼用でぺたぺたしたビニルで出来てるのよ」畳むのが多少煩わしくても、急な豪雨があれば困るだろうと僕は言ったが、彼女は平気な顔で濡れたら乾かせば良いと言った「沖縄の人は傘を差さないってきいたよ」「どこで聞いたか知らないが、きみは沖縄の人じゃないし、ここは沖縄でもない」

ひとしきり言い合うと「お兄ちゃんは雨男だから傘が要るのよ、私は晴女だからいらない」と無茶苦茶なことを言い出したが、確かに彼女は殆ど傘を使うことがなかった
土砂降りの日は誰かが傘を傾げてくれるのか、あるいは彼女の上にだけ雲間があるのか、何れにせよ傘は不要なものだった

「じゃあ要らないじゃないか」
「お兄ちゃんと出掛けるといつも降るからよ!」

結局、妹は新しい傘を買うことにした
片付けるのは僕だ ぺたぺたしてとても畳みにくい