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展示室には知らない国の民族が暮らすという家が設置されていた わたしは開きっぱなしの扉から 中へ侵入して 仕切りのない円形の部屋をぐるりと一周した 不思議な匂いがした 部屋の奥 真ん中には髭を生やした老人の絵がかけられている 首長か教祖といった雰囲気だ わたしは羊か何か動物の毛で出来た灰色の敷物が敷かれた硬い長椅子に腰掛けた 部屋の中央に置かれた机には この家の持ち主であった一族の写真が資料として置いてある 彼らは資本主義社会の波に上手いこと乗って 今では野山を遊牧することもなく 整えられた芝生の美しい 白い大理石の家に暮らしているということだった それはそれで よかった

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