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透明な器に花を飾る 果物を盛る 乳を注ぐ 水滴が落ちる 気化熱なのか それは

 
蒸発した人間から発生した雲は 千島列島を漂い やがて 涙のようにからい雨を降らせる 橋の上に撒かれた凍結防止剤を 踏みながら歩く 雪はもう 降らない この暖かさならば
 
硝子瓶のなかの液体は 滑らかに爪を流れ 乾いてゆく 思考の停止 ではないのだが 恐らく 乱反射する光線のなかで 緩やかに硬直する 
 
 
涙は虹にならない
 
 
 

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