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すぐ近くにあの子の気配を感じる

縁側の端 納屋の前に座って 干された下着をモビールのように 眺めている 花の刺繍がついたレースの下着 15歳で死んだあの子は つけたこともなかっただろう 90年代の田舎町で まだインターネットなんて無かった あの子はわたしより幾つも歳上だったから 死んでから随分経つのに まだ大人みたいに思えて でもほんとうは たった15歳で死んでしまったんだ 夏の日 わたしはあの子の気配を感じる なんの根拠もなく ただそう思うだけ