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それほど遠くへ行ってしまったわけではない友人と ほんとうに遠くへ行ってしまった友人の誕生日が同じ日であったことに気づき わたしは笑っている 彼女もきっと笑うだろう ふたりともほんとうに優しい人だった 誰も彼女らの真心を踏みにじったり 利用したりして良いはずが無かったのに 天秤にかけられたのが生命や愛だったなんて 酷いことが他にあるだろうか

わたしは消えた友人のことを思う 誰もいなくなった部屋とチョコレート色のドアのことを思う ギターケースとカルアミルクを思う 軽音楽部に入らなかった 映画研究会にも 写真部にも入らなかった 記憶は失われてはいない はじめから無かっただけなのだ
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