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ヴォトカ流れる河のほとりで

Das Tagebuch der Lily Mercury

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好きなひとの為ならどんな苦痛でも耐えられるということ 苦痛に耐える自分自身が好きということ 苦痛を味わうのが好きということ 被虐趣味の性癖は様々な要因があるけれど 自分以外のために苦痛を選ぶのは悲しいことだと思う 加虐する人たちが求めているのがなにか 見極めなければならない それは容易ではないことだ

ところでわたしはもう何も耐えられない 誰かの為に耐えることもしたくない そして誰かがわたしの為に耐えているとしたら それこそが一番耐え難いことなのだ 早く楽になりたい 口が裂けても言ってはならない暴言を吐いてしまう前に

 

まだ若いから なんでも出来るわ 健康だから 綺麗なのに 勿体無い 良い学校を出たのに 選ぶからいけないのよ 理想が高すぎる なにがしたいの それは無理よ 絶対に駄目

 

なにが出来るっていうの

 

 

わたしは自分自身のために腕を切る 鋭利な刃物が肌を切るのに痛くないはずがない 皮膚が裂けて 白い皮膚の間から滲みだした丸い血の雫が隣の雫と繋がって大きな楕円になり 涙のようにぽろぽろと落ち始める もうこれしか出来ない 腕についた何本 何十本もの白い線は古い傷 そこへ重なってゆく赤い線 もうほんとうに何をするのは良くて 何をしたら駄目なのかわからない わたしは わたしの愛するひとが幸いであることを祈ること以外にどうにも出来ないけれど せめて そうすることは出来て佳かったと思う

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