829

甘い水で濡れたあのひとの唇は薄くて軽い

思い出すのは骨ばった手の長い指とか ピアノを弾くように叩くキーボードの音とか たいしたことじゃない 大体もう顔もあまり覚えていない そういえばどんな声で喋るんだっけ 翻訳した日本語みたいな会話をしたね もっと自然に話せたら 少しはわかりあえたのかな それとももっと傷ついていたのかも 乾いた唇から煙 泣きかたも忘れた