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かみをさがすということ もうほとんど泥沼

 

かつてそこいらは墓地であった 丘があったかどうかは知らないが 地下に泉はあった わたしは蟻の巣のように張り巡らされた地下通路を縦横無尽に歩き回り 建屋と建屋を結ぶ長い架道橋を渡り かみをさがす 不毛なことではあるが 不幸なことではない たとえ見つからなかったとしても また歩き出せば良いだけのことだから

高架下のどの壁の隙間にも 違うひとの横顔が思い出される それはただのしみ