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あらゆる可能性に満ち溢れていた 希望は若さと共に なんの保証もなくただあった 戦争は起きなかったし 徴兵された恋人もいなかった 何かに反対した罪で牢屋に入れられることも 誰かと血が流れるほどの喧嘩をすることもなく 人生でもっとも美しいとされる年頃 青春を謳歌する振りに専念していた 何の不自由もなく 存分に絶望する権利さえ与えられていた しかし疑うことだけを知らなかったのだ