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旧い友人を訪ねたのは 期せずしてこの冬一番の寒波が街を襲った日であった 玄関で上着の雪をはらい 黒い革の手提げ鞄から 手土産にちいさなチョコレートの小箱を取り出して渡すと 彼女はウイスキー を垂らした熱い珈琲を用意してくれたので ふたりで頂くことにした 窓の外は女の髪と同じ白色に吹雪き 縁が歪んだ銀縁眼鏡は珈琲の湯気で曇っている すぅ とウイスキー の甘い香り それから口の中に広がる爽やかな酸味と苦味 喉元を流れる熱い珈琲 彼女は小箱に並んだチョコレートを眺めて うっとりしながら一粒選ぶと 細い指先でそうっと摘み口許へ運んだ まるで少女のままだった

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