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満月が雲に覆われて闇が広がると 眠りを覚ました死者が ゆくあてのない魂が 喪った肉体を求めて屍重なる丘を漂いはじめる 生と死が対極に存在することでないのは確かだが 羊皮紙の表と裏 または丁字路の右と左のように異なることも事実であり 入り混じったとて完全に同化することは出来ない 黄昏が夜に染まるように 冬と春の境目が溶けても 生きていることを忘れてはならない

 

日が暮れたのでマトカとバプチャに連れられて広場へゆくと もう近所のひとも大勢集まっていたので一緒にかがり火を焚いた 西の空に何人かの魔女が山へ向かって飛んでゆくのが見え そのなかに叔母の姿もあった 彼女はニルゲンドヴォでも100年ぶりと評される優秀な魔女で わたしもいずれその跡を継ぐ予定なのだが 何年か前に箒よりも電気掃除機が欲しいと言って怒らせてしまい それ以来飛び方を教えてもらえなくなってしまった そろそろ許してくれたっていいのに

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