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夜の特急電車は果てしなく続くトンネルの中を走るように バラストの上に敷かれたレールを走り 前照灯が闇を切り裂いてゆく 暗さはしかし無限に広がり いくら途切れたところでまた繋がってゆく 頼りなく光る車内灯は朧げにあなたの輪郭を照らし その表情は如何ほどもわからない 或いは眠ってしまったのだろうか 臙脂色の毛羽立った生地の座席に深く座り頭を垂れたまま アルコールの匂いを漂わせじっとしている その足元の木の床には傘から滴る雨水で丸いしみが出来ていた 終着駅は近い しかし 降りたところで行くあてなどないのだった