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保育所へミミを迎えに行くと 顔を見るなり大声で泣き出したので 愛想笑いを浮かべながら先生方に挨拶をした 「気にしないでください いつもこうなんです」と言うと 気まずそうな顔で癇癪を起こしている小さな子に 「もうお家へ帰れるんだから泣かないでいいのよ」とあやしてくれたが一向に泣き止まなかった 先に鞄をふたつと帽子 靴下 名札は外してからボードにひっかけて…彼女の母親から教えられたとおり 順番に集めて回っていると 背後から数人の男の子がやってきてちいさな手で握りしめたプラスティック製の組立玩具を見せに来てくれた 「すごいね坊や 自分で作ったの?」彼らはぱっと眼を輝かせて自慢げに頷くと 互いに押しあいながら走ったり 新しい玩具を取りに行ったりして散り散りになっていった さて我がヒステリーの女王・甘えん坊の可愛いミミはというとまだ先生の腕の中で顔を真っ赤にしながら涙と鼻水に涎まで垂らしながら泣き叫んでいた 何が気に入らないのか知らないが この子はわたしの顔を見るとすぐに泣いてしまう 荷物をすべて集めたので 先生に謝りながら 手を差し出すと 同世代の子たちと比べると肉付きの良い身体を任せてきたので そのまま抱きかかえて車に乗せた 大人しく後部座席のチャイルドシートに座らせて ベルトをはめるのに手こずっていると 自分でさっさと締めてからまた泣き出した やれやれ 結局それから彼女は50分間壊れたスピーカーのように泣き続けた まだまだ泣くことは出来たけれど母親が帰ってきたから泣くのをやめた それから3人で軽い食事をして 夜のニュースが終わったあと 帰り際にわたしに抱きつき頰にキスをして「バイバイ またね」と言ったので「明日も迎えに行くわよ」と冗談を言うとまた泣き出してしまった