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死に至る病というよりは 性質の悪い風邪のようなものだった あなたが幸せになってほしいし わたしも幸せになるべきだからなんて格好をつけていたけれど 彼では彼女を幸せに出来ないと見切りをつけただけのことで ただ時間がかかりすぎたのだ 長い目で見れば大したことではないにしても 終わってしまえば どうということはない 流れない河は澱んで濁り 水面を漂う浮草だけが活き活きと深緑色に輝く

澄んでいきますように


2,000日の眠りから醒めたとき 嵐は過ぎ去っていた あの日生まれた子供たちは 今やたどたどしくも自分の名前ならば漢字で書けるし 補助輪なしの自転車にだって乗れるようになっていた 彼女は仕事を見つけ 税金を納められるようになり 穴の空いた下着を繕うのをやめた それがどうしたのかと言えばなんてことはない いずれ忘れてしまうだろう プリズムで分散した光が部屋中に広がりラジオが女優の訃報を告げた