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電車を乗り継いでは降りるたびに 空気が冷えて澄んでゆく 夕焼けの橋を渡り これで今日は終点まで景色を眺めるだけとなった 高架に敷かれた単線の路を焦ることもなくゆっくり走りながら通り過ぎる人気のない停車場 その待合室と呼ぶには簡素すぎるトタン屋根の雨除けと木製の長椅子に絡まった蔦は紅葉をはじめていた 間もなくその景色も闇の中へ消えて見えなくなるだろう 車内にいるのはもう自分と運転手のふたりきりだった