1449

曇天 白い雪が残る枯れた草木の平野が広がった線路沿い 黒い鳥が空を渡ってゆく 駅について降りたのは わたしと 年老いた男ひとりだけだった 狭いホームのうえに撒かれた塩化カルシウムの粒のうえを歩くと ざりざりと音がした 暖かい日だと聞いていたけれど 風はちゃんと冷たかったし ここいらの雪はまだ溶けずに残っている わたしが生まれた街 最果てのそのまた向こうにあるちいさな村 祖父はそこにの鐵工所に勤める労働者だった なにを作っていたのかは知らない 大人になってから 死んだ祖父は 昔 ここいらにあった鐵工所で働いていたと教えられたから その跡地に立つ錆びた「売地」の看板 やはり枯れた草が多い茂っている

何処へいくの と娘が問う わたしは 死へ向かっていると思う それはごく当たり前のことで 問題はどのようにその道を歩むか ということだ