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椅子から下ろした足の踵が床につかない時から珈琲を飲むのが好きだ 砂糖を入れるなら飲んではいけないと言われたので 大人の真似をしてブラックにするか たっぷり牛乳を入れて飲んでいて今も変わらない 味について特にこだわりはないけれど 唯一好きで買う豆はインドネシアのトラジャ 珈琲なら何でも良いと思っていたのに これだけは初めて飲んだ時に名前を聞いて覚えることが出来た (やれば出来るものだ) ブルー・マウンテンやハワイコナを飲んだときでも 大してわからなかったのにこれは特別だった 澄みきった珈琲そのものの味がするのだ 初めて飲んだのが何だったか知る由もないが トラジャそのものだったらいいと思う
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レールを押さえるのに打ち込まれた犬釘はすっかり錆びて 枕木自体もかなり朽ちてていた 苔生した停車場は使われなくなって久しい
ふるさと という単語から連想するのは うさぎ追いしあの山であり 小鮒釣りしかの川であるのだけど そんなものはもう殆ど無くて そこから生まれ育つ子供も減ってゆくばかり ふるさとの容貌は変化してゆく
懐かしくないふるさとの景色は それでも美しい