2015-03-04 18 Fiktion シェパードを連れた女といつか秋の暮れだか或いは冬の終わりだったのか花の咲いていない桜並木を歩いた時期になればこの川沿いはとても美しい桃色の霞でいっぱいになると少し酔った女は嬉しそうに話した僕はこの街へ来てもう何年も経つけれど桜は見たことが無いと言った人混みを歩くのが嫌でなんとなく避けていたのだ花が咲いたら佳い人と一緒に見に行きなさいよと彼女は微笑んだけれどあなたと来たいですということが最後まで言えないまま立ち別れてもう何年も経つ今でも何処かの街角をシェパードと歩いているのだろうか