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通りの木蓮が肉厚の花弁を開かせている穏やかな午後にも自動車はめまぐるしい速さで環状道路を走ってゆく 何処かで楽団が演奏をしているらしい 聴き覚えのあるような音楽が聞こえてくる 私は長い横断歩道を駆け足で渡りきり 顔を上げて初めて其処が 既に訪れたことのある場所だと気付く