2016-03-03 383 Fiktion 霜がおりては 溶けて ぬかるんだ畦道は次第に青さを取り戻してゆく 麓の町には 幾つも白い小さな花が咲き 太陽が樹々の影を落し 雲雀が何処かで歌いはじめた 彼女はベージュの軽いコートを着て 鼻唄まじりに歩く それは去年の春にふたりで百貨店へ見にいき 買ったものだった