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揺蕩うままに伸ばした髪が 肩甲骨のしたあたりまで揺れている 来年には 腰まで届きそうねと 彼女は微笑みながら わたしの髪を編んだ 子供の頃 ふざけて脱色をしたけれど 少しも似合わなかったから それからずっと髪は染めていない 美容師に ところどころ 茶色い束があるのを 気に入らないと言ったら そういう髪質だから仕方ないと つまり三毛猫の毛並みのようなもので 納得しがたいことではあるが じっさい根元から毛色がちがうのだった

彼女の細い指先が 首筋に触れるたび わたしは眩暈をおぼえる 恍惚 学生時代 髪を伸ばすことを禁じられていたわたしには そのような想い出がひとつもない それでもひとつずつ 集めてゆけることを 愛しく思う