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北国に暮らしていたころは 買い物に行く店は誰でも決まっていて 売っているものも大抵同じだった インターネットをつかえば別だけど 今も変わらないだろう レンタルビデオショップのレジにあるチュッパチャプスが 知る限り街で一番安かったので しょっちゅう買いに行っていたが わたしの嫌いなストロベリー味ばかりがキャンディスタンドに残っても 店の親父はすべて売り切るまで仕入れる気がないのか 他の味は入荷されなかった
ハイスクールから家までは 歩いて30分くらいだった チュッパチャプスを舐めながら公園の中を歩くと 近いような気がしていたけど 地理的には余計に遠回りをしていた

さて 断固としてストロベリー味のチュッパチャプスを買わないまま わたしは卒業と同時に引越してしまったのだが 先日 数年ぶりに訪れたら 店ごと綺麗さっぱり無くなっていたので驚いた 気がつかずに歩いて通り過ぎて しばらくしてから戻って確認したのだ 店の親父は 山のような大量のビデオテープは 何処へ行っちまったんだろう 娯楽や欲望は姿形を変え いつまでも渦巻いている世の中で ストロベリー味のチュッパチャプスは 今日もコンビニエンスストアのキャンディスタンドに残っている