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消した覚えもないのに見つからない映像を探して 結局 残ってはいなかった あれは日本海に消えた泡になったのだ

あまりに澄んだ水は海面と空の境目が曖昧であることを知らなかった 冬の朝 揺らぐ藻と 光を反射する魚の鱗 そして冷たい流れが海中であることを肯定する 同時に捉えられない瞬間は泡になる 膨らんでは弾ける空気 波の音 磯の香り