2017-05-29 835 Fiktion 下腹部に鈍痛を覚えるたび あのひとの子供が欲しかったと思う あなたの子供が欲しかったと言った凍えるような真冬の夜のことも コートのポケットのなかで繋いでいた手を 一瞬つよく握ってくれたことも はっきりと憶えている 死にそうな顔をしていた あるいは死刑宣告を受けたように悲愴な表情でいて なのにふたりとも涙の一滴も流さなかった そういう人間だからそういう人間だから