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薄皮一枚で包まれた果肉は滑らかなかたちを保ったままで発酵していた ナイフを差し込むと紅い皮の間から膿のように変色した実が溢れ出し 食べられたものではなかった 熟れどき を見極めるのは難しい 少しだけ残った白い実を舐めるように噛むと 眩暈をおこすような甘い香りが鼻を突き抜け 舌が痺れた