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客間を片付けていたら古い腕時計を見つけた ちいさな濃紺色の文字盤に金の数字 ベルトは少しよれた細い黒色の革で出来ている 針は動いていない いつから止まっているのか それよりもいつからあったのか はたまた誰のものなのだろうか? 文字盤の裏には家族の誰のものでもないイニシャルが端麗な筆記体で彫られていた 手首につけてみると ちょうどいいところで穴が広がっていたので金具を上手くはめることが出来た 動かない誰かの時計 でも何処かで見たことがある色をしてるちいさな腕時計